いやまじでどこいったの高三のオレ。



寝て起きたら元に戻ってんじゃないかなーとか期待してたけど、目が覚めてもそこはやっぱり懐かしの実家だった。

さて、どうしたもんか。
明日は愛する相棒殿の誕生日で希望休まで貰ってお祝いするつもりだったのに。というか向こうはどうなってんだろ。時間は進んでいるのか。
考え出しても結局答えは出なくて。とりあえず部活には参加しねーと、とオレは家を後にした。










「へっ?」

「……、同じことを言わせるつもりか」

「あ、いや、聞き取れたんだけど、あー、うんちょっとビックリしただけ。別にオレはヘーキよ?むしろ大歓迎、なんだけど……」



やっぱり好きなヤツと一緒に誕生日迎えたいしダメ元で誘おうと思ってたから、緑間からの誘いは素直に嬉しかった。
しかしそこで発生するのがオレの曖昧な記憶とオレらのあやふやな関係性の問題である。
コイツは誕生日だとは口にしなかったし、たぶんまだ付き合ってはなかったはず。
軽率な判断でお泊まりすることになってしまったけれど、もし泊まっている最中に“オレ”と、高校時代のオレが入れ替わったらどーするよ?
同じベッドでこんばんわ、とか高三のオレのメンタルは耐えられるわけ?

……。

…………、あ、ダメ。たぶん恥ずかし死にする。



「……無理、なのか?」

「……えっ、とぉ……あー……」

「嫌なら別にいいのだよ」

「嫌じゃない嫌じゃないから!真ちゃんとお泊まりきゃっほーい!とか全力で思ってっから!!!」

「……」

「やだ、そんな見つめられたら和成照れちゃ」

「黙れ」



ボケを瞬殺されたことはさておき、もっかい真顔でこっちを見詰めた真ちゃんは、その綺麗な唇に音を乗せた。



「……それで、結局、泊まりに来るのか?」

「いく」



翡翠の瞳に思わず即答したけど、たぶんオレは悪くない。

高三のオレ、ごめん。





欲求に忠実にいこうと思う。


20##年7月6日午前




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