緑間と盗み聞き






「や……っあぁん……!」

「ん……くっ、は」





壁越しに聞こえてくるヤらしい声に、真ちゃんと二人して頭を抱えた。








放課後、偶々部活に向かうところを担任に呼び止められたのが全てのはじまりだ。





「もー、断ればよかったのに」

「今日は年上の頼み事は黙って聞くように言っていたのだよ」

「でたよおは朝!」





資料室に教材を置きにいってほしいってただのパシリじゃんと思いながらも、まさかオレだけ断るわけにも行かないから同行する。
部室棟とは真逆の位置にある資料室に続く廊下は、放課後のせいかいつも以上に静かでなんか不気味。





「そういえば第一と第二どっちだっけ?」

「第二資料室だ。オマエが鍵を受け取っていただろう」

「あれ、でもこの鍵、第一の方だぜ?」

「……?先生が間違えたのか?」

「ま、でも第一の方から入って後ろのドアから第二に入ればいっか」





二度手間だけど。
何か今日はついてねーな。

ぼんやり考えながら辿り着いた資料室の第一側のドアを開け中に入る。
そのまま狭い部屋を突っ切って奥のドアから第二資料室に入って頼まれた教材をそれぞれの棚に戻していたときだった。





「……??」

「高尾、どうした?」

「……いや、何か声と足音が」





聞こえない?って言おうとしたとき、隣の資料室のドアが激しく音を立てて開かれた。あまりの音の大きさにビクリと肩が跳ねる。
さすがの真ちゃんも驚いたらしい、目を見開いて部屋を隔てる壁の方を見つめた。

壁越しに男女の言い争う声が聞こえる。





揉めているみたいだな……

つかあの声、同じクラスの立花と三瀬じゃねえ?





付き合ってるという話は聞いていたけど何でこんな時間にこんな場所でケンカしてんの。
とりあえず二人して声を潜める。
壁があるしドアも閉まってるから向こうから俺たちに気づくこともないだろうけど、見つかったら見つかったで何か気まずい。





高尾

え、まさか止めに行けとか鬼畜なこと言わないでね?

言うか。それにどうやら収まってきた……、っ

オイオイまじかよ……





言い争いの声は長く続かず。
次いで聞こえてきたのは女子の鼻から抜けるような高い声。
合間に「だめ……っ」とか聴こえるけどむしろダメなのはこっちだから。なにケンカの直後にイイ感じになってんのオマエら。
完全に今からナニが始まるか悟ってしまったオレはチラリと真ちゃんに視線を送る。





しーんちゃん……顔真っ赤なんですけど

ッ、うるさい赤くなどなっていない

……





一刻も早くこの場を離れなければ。主に真ちゃんの精神的な何かが崩壊する前に。
そう感じたオレは、この際あとで恨まれてもいいわ行ったれと第一資料室に続くドアに向かおうとした。

けど。後ろから思いっきり手首を引っ張られたことでそれは阻止される。
そのまま真ちゃんの胸にダイブする形になって慌てて振り返った。





っちょ、何すんのしんちゃ……

静かにしろ

……んっ





不意に。綺麗な緑色が視界を覆う程に近づいたかと思えば、唇に触れる柔らかい感触。
角度を変えて繰り返されるキスに無意識に応えかけて。慌てて身体を押し返す。





待ってまって、なにお隣の雰囲気に便乗してんの!

どうせ向こうも時間がかかるだろう

そういう問題じゃ……っ

オマエは周りの目ばかり気にするからな、たまにはいいんじゃないか?こういった状況も





いやよくねーよ。と言う言葉は真ちゃんのキスにのまれて消えた。
ドコでSスイッチ入っちゃったのかしんないけど、こうなった真ちゃんはもうこっちが折れるしかないことを知ってる。

クラスメートの厭らしい声をBGMに、オレは口内を侵し始めた舌に自分のそれを絡めたのだった。








(理性を教室に忘れました)



(13/2/4)




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[mokuji]

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