宮地サンにおねだり
「ちゅーしたい」
「はっ?」
「宮地サン、ちゅーしましょ、ねっ?」
いや、「ねっ?」じゃねえよ。
隣で何か思いついたように顔を上げた高尾がいきなり何を言い出すかと思えば。
オマエ自分がなに言ってるか分かってんのか。
細めた視線に怯むことなく、ぐっと体を寄せてくる。
「宮地サン」
「まて、とりあえず待て」
「オレ犬じゃないですよ」
「待てが分かる犬のが利口だわ」
「ひっでえ」
笑うけど目がマジだ諦めてねえ。
てかここ部室だぞ分かってんのかと問えば、みんなまだ来てないんでと平気だと述べる。
そういう問題か。いつ誰が来るかわかんねーだろバカ。
「オレ、今したい」
「……ッ」
「だいじょうぶですよ。誰も来ないって、センパイ」
普段はセンパイとか呼ばねえくせに。
首に絡みつく高尾の腕を振りほどけないのは惚れた弱味だ自覚はある。ムカつくことにな。
背伸びするように顔を近づけてくるから少し屈んでやると、ふっと口角が上がった。
「宮地サン。すき」
「知ってんだよ、ばーか」
(そして重なる唇)
(13/1/30)
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