イブニング・コール
「ういー、和成くんですよー……」
『何が和成くんだコラ。つうかオマエ、もう寝てたのか?』
「……あ……、こんばんわ宮地サン。ちなみに今合宿中でーす」
夜。
真ちゃんが風呂に行ってる間、ベッドでゴロゴロしてたらいつの間にか微睡んでいたらしい。
着信で目が覚めて、相手も確認せずに出たら宮地サンだった。
宮地サンとは卒業してからもちょくちょく連絡をとってる。あとよく飯につれてってくれる。
勿論、元主将の大坪サンや同じくスタメンだった木村サンともメールのやり取りはしてるけど。やっぱり宮地サンがダントツ。
『ああ、何か言ってたな。キセキが一同に会すとかなんとか……オマエ、大丈夫なん?』
「えっ、何がですか?」
電話越しに聴く声は少しだけトーンが低い。
機嫌が悪いワケじゃないと思うけど顔が見えない分、ちょっと不安になる。
『いや、なんかキセキの奴らにやたら懐かれてたろ』
「別にそんなこ」
『自覚ないのが一番厄介だわ』
「ちょ、せめて最後まで言わせてくださいよ」
笑いながら言えば『笑ってんな、バカ』と怒られる。相変わらず理不尽だよな、宮地サン。まあそういう唯我独尊なトコも嫌いじゃないけど。
『うざかったらちゃんとうぜえって言えよ。オマエがやたら甘やかすから調子に乗んだからな、緑間とか緑間とかキセキとか緑間が』
「宮地サン、それ個人的恨み入りすぎっす」
『うるせー。事実だろうが』
「ふはっ!真ちゃんに関してはツンデレだから仕方ないですよ。……あ、ところで何か用事だったんですか?」
『……』
尋ねた内容に返答がなくて。
オレは何か不味いこと聞いたかと考えるけど別に普通の質問だったよな。
ちょっと待ってみたら、電話越しに深々とため息をつかれた。え。なんで。
『オマエのそうゆーとこがムカつくわ』
「えぇぇ?!なんですかいきなり!!オレ何かしましたっけ?!」
『とりあえず色々気をつけろよ』
「えっ?なにが」
『キセキの連中!もっかい言うけどちゃんと気をつけろよ。じゃーな』
「え、えっ、ちょ、宮地サ……っ?」
通話の役目を終えたスマホを呆然と眺めていたら、ちょうど真ちゃんが戻ってきた。
「……なぜベッドの上で正座しているのだよ、高尾」
「あ、いや、別に」
結局なんの用事だったんだろうと思いながら。また次に話したときにでも聞けばいいかと切り替える。
何かよくわかんねーけど、心配してくれてたみたいだし。
「あと顔が弛んでいるぞ。不愉快だ」
「真ちゃん一言余計」
(誰かに気に掛けてもらえるというのは、やっぱ嬉しくて)
(13/1/27)
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