見つめる後ろ姿





別に自分が特別だとは思っていない。

だから運命に選ばれる為の努力は怠ってはいないつもりだ。





そしていつもふざけているように見えて。
アイツも人知れず人事を尽くしていることをオレは知っている。










「おーい真ちゃん?難しい顔してどーした?あ、いつもか」

「ふざけるな、オレはいつも難しい顔などしていないのだよ」

「ぶはっ!うっそあれ無自覚?まじかよ!真ちゃんウケる!!」

「高尾……」





コイツがオレの隣で騒ぐのは最早日常茶飯事。気づけば横にいるのが当たり前になっていた。
別にそれが不快な訳ではない。
というより、本当にオレが不快に思うようなことは高尾は決してしない。

人との距離感を図るのが、上手いやつだと常々思う。

そして、本人に自覚はないのだろうが。恐らく、特異な人間を惹き付け易い性質の持ち主だ。
キセキの奴らがやたら構うのは、高尾の誰とでも気兼ねなく話すその性格故だろう。

良くも悪くも、コイツは誰も特別と扱わない。





「あ、そういえばこの後さ、ちょっと黒子のトコ行ってくるから真ちゃん先に夕飯いっといてー」

「は?」

「え、だから、」

「黒子がオマエに何の用だ?」





そう尋ねれば、困ったように笑う。

高尾のことだ。
ただ呼ばれたから行く。それだけのことなのだろうがオレにはその態度がもどかしく思えて仕方ない。
理由も定かでないのに呼ばれ、オマエはオレの傍を離れるのかと。それが此方の都合だとと分かっていつつも、そう告げそうになる。





「用が済んだらすぐ合流するって」

「……」

「しーんちゃん。別に真ちゃんの悪口言いに行くとかじゃないんだから」

「当たり前だ」

「すぐ戻ってくっから」





へらりと笑えばそのまま踵を返す。



高尾はたまに、自分がオレの背中ばかり見ていると溢すときがあるが。それは此方の台詞だ。
勿論それを口にするつもりなど更々無いがな。





オマエの居場所は、此処であればいいと思うのは。
所謂エゴなのだろうか。








(例えば意思とは関係なく)
(奪われるものがある)



(13/1/24)



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