宮地サンから帰宅命令







「オマエ、何か顔赤くね?」

「え。そーっすか?」





こっちに向き直った高尾の顔をまじまじと見れば、へにゃりといつもの三割増し気の抜けた笑いを浮かべた。
断りも無くうっすらと汗ばんだ額に触れる。

予想通り、熱い。まだ基礎練すら始まってねーのにこの体温はねえだろ。

ジロリと睨み付けてやるとバツが悪そうに視線をさ迷わせる。





「オマエ、自覚症状あんだろ」

「別になんとも……」

「高尾」

「……えっと……ちょっとだけ、寒いっす」





誤魔化せねーのが分かったのか。渋々答える高尾に「あとは?」と重ねて聞く。





「……喉も、まあ少し、違和感ありますけど、そんな大したこと」

「いーかげんにしろ轢くぞコラ」

「……。もー宮地サン、なんで気づいたんですかー?クラスメートすら気づかなかったのに……」

「は?オマエ、まさか一日そんな状態なん??」

「あ」





高尾がため息混じりに溢した言葉に驚く。
そのぼやっとした状態で一日過ごした挙句、誰も気づいてねえとか。

確かに、パッと見はいつも通りだ。てかいつも通りに振る舞ってっからなコイツ自身が。
でも、やっぱりいつもの高尾と比べたら一目瞭然だろ。





「……?つーか、緑間は?」





アイツなら気づいたんじゃねーの。不本意だがな。
そう心の中だけで毒づいて尋ねると、予想外の返答が返ってくる。





「真ちゃんは今日は風邪でオヤスミっす」

「はっ?まじかよ!アイツ風邪とかひくの?!」

「ブフォ!ちょ、宮地サン……ッ」





意外すぎてフツーに驚いたじゃねえか。
いやそもそも一年スタメンで仲良く風邪とかひいてんじゃねーよ自己管理甘ェぞ。

笑ってる高尾の頭をくしゃりと撫でる。





「笑ってねーで今日はもう帰れ」

「えぇぇ……」

「一人で帰れねえなら送ってやろうか」

「いっ!いやいいっす!大丈夫です一人で帰りまっす!」





激笑顔で言ってやったら慌てて踵を返しやがった。
そのまま大坪のとこに行くかと思ったら、立ち止まってこっちを振り向く。





「宮地サン、」

「あ?どーした」

「オレ、実はちょっと嬉しかったです」

「……は?」





見つめた先には、やっぱり気の抜けた笑顔。





「宮地サンみたいに、他人の変化にも気づいてくれる存在が、近くにいるって幸せっすね」

「ば…っか、なこと言ってねえで……!さっさと帰って寝ていつものアホみたいなテンション取り戻して来い」

「はいっ」








(他人のことじゃ気づかねーよ)
(オマエのこと、だから)



(13/1/24)



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