お風呂でバッタリ
「あー、邪魔しちゃった?」
「〜〜ッ!ちちちち違うっス高尾っち、誤解ぃぃぃぃぃ!!!!」
「黄瀬ェ、るせー」
風呂入ろうと大浴場の脱衣所の扉を開けたら中で黄瀬くんと青峰が折り重なっていた。
見方によっては黄瀬くんが、まぁ押し倒してるよーに見える。
冗談混じりで聞いたらすごい勢いで否定されたけど。
「ほんと、違うんス、今のは……っ事故で!」
「黄瀬くん……そんな、全力で否定されると……余計あやしーわ」
「えぇぇぇ?!!!」
真顔で告げれば泣きそうに顔を歪ませる。普段はモデルなだけあってイケメンなのに勿体無い。
感情豊かなのは黄瀬くんのいいとこだけどね。
「高尾ォ……黄瀬がうるさくなっから変な言い方すんじゃねーよ」
「ふはっ。ごめんごめん」
身体を起こす青峰がめんどくさそうな声を出すから素直に謝る。
ちょっと天井を仰いだ濃紺の瞳が、すぐにこっちを向いた。
「……オマエいまから風呂か」
「そーだけど」
「えっ?高尾っち、オフロ、っスか……っ?」
「えっ?風呂場に来てる時点でフロしか選択肢ないよね」
青峰の問いかけに笑いながら答えれば黄瀬くんが何かソワソワし出す。不思議に思って青峰を見ればなんかそっちはそっちでニヤニヤしてるし。
なにもしかしてフロに何か仕掛けられてんの。シビレ罠とか。いやそんなまさか。
「じゃあオレももっかい入っ」
「おおおおオレらはもう行くっス!高尾っちごゆっくり!!!!!!」
「……おぉぉ?」
何故かまた服を脱ぎ出そうとした青峰の襟首を黄瀬くんが掴んだかと思うと、そのまますごいスピードで二人は去っていった。
結局、風呂には罠とかもちろん仕掛けられているわけもなく。
オレはのんびりさせてもらったんだけど。
一体なんだったんだろ。
(高尾っちの純潔は守れたっス)
(チッ、ただハダカの付き合いをしようと思っただけだろーが)
(青峰っちが言うと何かヤらしい……)
(13/1/22)
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