廊下で騒がないで
「高尾」
「ん?どしたん真ちゃん、怖い顔し……」
「あ。高尾っちぃぃぃっ!」
「うぉぉっ?」
真ちゃんと食堂に向かう途中。
黄瀬くんの襲来を受けた。
振り返り様に突撃され、思いっきりバランスを崩す。
そりゃ黄瀬くんも190近い体躯なんだから仕方ないっちゃ仕方ない。決してオレのバランス力とか体格の問題じゃない。
「お疲れさまっス!夕飯っスか?」
「お疲れさん。オレらは今からだけど、黄瀬くんも?」
「ハイ!」
相変わらずきらきら眩しいな黄瀬くん。あと犬っぽいよ黄瀬くん。
両腕でオレの首んとこホールドするみたいに正面に立ってるから、自然と見上げる形になる。
目が合ってヘラリと笑った瞬間、横腹に鈍痛が走り思わず蹲った。
「えっ?た、高尾っち?」
「おぉぉ……ちょぉぉッ、なぁにすんの真ちゃん……っ?」
黄瀬くんの影越しに今日のラッキーアイテム、広辞苑を手にした真ちゃんがこっちを見下ろしてんのが見える。
それが凶器だろ。完全にそれで殴ったっしょ。
そういう意味を込めて見上げても眼鏡逆光して表情わかんねー。でも何か、機嫌悪いっぽい。
「よし高尾そのまま後ろへ下がれ。……黄瀬、オマエは動くな!」
「はあ?この体制のまんま下がんの?」
「え?なんで……あああ!!」
蹲ったカッコのまま後退したら、オレの上で輪っかを描いてた黄瀬くんの影がなくなった。
さっきまでオレの首に回されてた腕だ。
真ちゃんの横まで下がって立ち上がると、何かドヤ顔で黄瀬くんを見てるし。
え。意味が分からない。
「緑間っちヒドッ!鬼!!」
「うるさい黙れ」
「ちょ、合宿中はただでさえなかなか二人になれなくてツラいのにぃ〜っ」
「なる必要すら感じん」
「オレはビシビシ感じるっス!!」
「妄想ではないのか?」
「緑間っちぃぃぃ……!!」
なんか始まったよ。
この二人って性格真逆っぽいのに言い合うときは息ピッタリだなー。
とかどうでもいいことを考えてたら、ちょうど黒子と火神が通りかかるのが見えた。
「お疲れー。オマエらも今から飯行くの?」
「お疲れさまです。高尾君も良ければ一緒にどうですか?」
「マジ?よかったー、あの二人盛り上がり出しちゃってオレぼっちになってたんだよねー」
「……オマエも大変だな(色んな意味で)」
「?ま、別にあの二人が楽しそうだからいーんだけどさ」
そのまま二人と食堂に向かって飯を食べたオレは、食べ終わる頃に現れた真ちゃんと黄瀬くんにこっぴどく怒られた。
オレ、ちゃんと先に行くって声掛けたんだけど。
(そんなに置いてきぼりにされるのイヤだったのか……)
(13/1/20)
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