緑間とバスケバカについて
「難しいことも考えてみた時期とかあったけどさー、結局行き着くとこはみんなバスケバカってことだよな」
オレを認めさせると宣言したヤツは、いつも笑っている。単純にバスケを楽しみ、バスケに対して真摯に向き合う。
それが高尾という男だ。
正直、会った当初は軽薄そうな人間だと毛嫌いしていた。だが共に過ごす時間が長くなるにつれ、ヤツに対する印象は変わっていった。
「あ、言っとくけど真ちゃんもそのバスケバカの一員だからね」
軽薄そうだと思っていた笑みも、見慣れてしまえば屈託なく感じ。馴れ馴れしいと思っていた呼び名も今では当然のものとなってしまった。
これが所謂、懐柔される。ということなのか。
「バカにバカ呼ばわりされるとはな」
「そんなバカが嫌いじゃないくせに〜」
「意味が分からないのだよ」
「……オレは好きだけどなあ」
「……っ」
「バカみたいにさ、バスケに夢中になってる奴ら」
稀に、コイツの突拍子ない発言に胸がざわつくことがある。
これだけはいつまで経っても慣れることはない。
「まあオレもそうなんだけど……ってか青春っぽくてよくね?大好きなバスケに青春捧げてマス!みたいな?」
「…………」
「あれ?真ちゃん?まさかのノーリアクション??」
好きとか、嫌いじゃないとか。
コイツはあまりにも自然に口にするから。オレはいつもその意図を捉えかねる。
まっすぐに見つめてくる視線を交わすように。
オレは窓の方へと向いた。
「真ちゃん」
「?」
「……また、キセキの奴らと楽しくバスケ、出来るといいね」
振り返ることをしなかったオレに、高尾の表情は見えなかった。
だが、恐らく。声の柔らかさから察するに、微笑んでいたように思う。
(見透かされるのも悪くない)
(13/1/2)
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[mokuji]