黒子っちと現在地点の想い
「今日も黒子っちにフラレたっス……もうくださいとか言ってないのに、ただ遊びに誘っただけなのに……」
「ブフォ!黄瀬くん……っくださいとか言ったの?!」
「それは最初だけっス!」
「いや最初だけとかじゃなくてっ、くださ……ぶはっ!嫁取りか!」
高尾っちは相変わらずの笑い上戸でテーブルに伏せて爆笑してるけど、オレとしてはマジだったからあまり笑えない。
まあ別に高尾っちになら笑われてもいいか……。
「〜〜ッ」
「って腹捩れるほどは笑いすぎっスよ!」
その後、高尾っちの笑いが一段落したとこでもう一度相談してみる。
「オレとしては前みたいに一緒に飯食ったり楽しくやりたいんスけど、黒子っちはそうじゃないんスかね……」
帝光のみんなと過ごした時間はやっぱ楽しくって。
なんやかんや言いながらも、オレはあの日々がとても大切でかけがえのないものだと思ってる。
でも、黒子っちは。
「まぁ……黒子にも色々あるんじゃねーの?キセキにはわかんねえ事情、が」
「オレらに分かんない、色々?」
こういう時、高尾っちは少しだけ寂しそうな目をする。
それは、黒子っちが不意に見せるものと、よく似ていた。
「別に黄瀬くんのこと嫌いなワケじゃないだろうし、めげずに誘ってたらいつか遊びくらい付き合ってくれるって!」
「別に黄瀬君は嫌いじゃないです。ただ少しめんどくさいだけで」
「それは黄瀬くんのチャームポイントだろー?」
「高尾君の解釈は前向き過ぎます」
「そーか?」
あれ?
「ちょ、え、えぇぇえぇッ?!!黒子っち?!!!」
「はい、何ですか?」
「何ですか?」じゃなくて、え、いつからいたの。
ナチュラルに会話に参加していた黒子っちとそれを受け入れてた高尾っちを交互に見る。
二人とも何をそんなに驚くことが、みたいな顔してるけどフツー今のは驚くって。
「黄瀬君」
「はっ、はいっ!」
透明な声がオレを呼ぶ。
慌てて返事をすれば、黒子っちはいつもと変わらない無表情のまま口を開いた。
「こないだは練習中に遊びに誘うから断ったんです。オフの日が合えば、遊びくらいなら行きます」
「え」
「行かないんですか?」
「行く!行くっス!」
まさか誘ってもらえるとは思ってなかったオレが前のめりになると、黒子っちの無表情がわずかに崩れ、高尾っちは声をだして笑った。
きっと、黒子っちの色々っていうのをオレが考えたって分かんないんだと思う。
でも、それ以上に。
これから先の未来で、少しでも寄り添うことができたら。
(過去から未来へ)
(笑顔を繋ごう)
(13/1/14)
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[mokuji]