り「略する」
(【略する(りゃくする)】
はぶく。簡単にする。略す)
ストバスで偶然鉢合わせた紫原に呼び止められ、話をされ。
だけど言わんとするところがイマイチ分からずかれこれ10分が過ぎようとしていた。
「高ちん、いい匂いする」
「まじか。むしろ汗臭い……ってか気のせいか徐々に距離が詰まってね?」
「うん。だってオレ近づいてるし」
「あんま近距離で見下ろされると圧迫感尋常じゃねーんだけど」
冗談ぽく告げた言葉に紫原が顔をしかめる。
やばい。なんか、引っ掛けちまったのかも。
隠しきれない不満のようなものが見下ろしてくる双眸から感じ取れる。
「怖い?」
「へっ?」
「高ちんはちっせーから、あんまり近くに行くと怖がらせるかもって赤ちん言ってたし」
「はぁぁ……?」
ぎゅっと眉を寄せる紫原は至って真剣に発言しているらしい。
ちょっと待て。オレがバスケプレーヤーなこと忘れてね?
確かに2メートルオーバーは中々出会さねえけど、それでも周りは殆ど自分よりデケー奴らばっかだってのに。怖いとか。
「思ったことないって。……なんつーか、存在に圧倒されるときはあるけど」
「?……怖くねーってこと??」
「おう、怖くねーよ」
へら、と笑えば。
紫原もふにゃりと笑った。
「てか結局何の用だったワケ?」
「あ、そうそう。……怖くねーならアレ、言ってもいいんだよね」
「??」
「あのねー」
ぽかんとヤツを見上げてた顔が。
両サイドからガシリと鷲掴まれる。
大きな背を屈めた紫の目が、少し上にあった。
「うまそうだなーって」
「……は?」
変わらず、大事なところが抜けてる紫原の言葉。
だけど。
なんとなく、いい予感はしない。
「高ちん」
「な、なに?」
「んーん、だから」
(高ちんが、おいしそう)
(13/1/13)
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[mokuji]