か「可愛がる」
(【可愛がる(かわいがる)】
愛らしく思いやさしくする。
(反語的に用いて)
痛いめにあわせる。しごく。)
「和成……遅かったな。今が何分か、まさか分からないとは言わないだろう?」
「はぁ……はぁッ、てかっ……!そもそも、5分で来いってのがムチャ振り……ッ!!」
久しぶりのオフ。
家で月バス読みながらゴロゴロしてたら突然赤司から着信があった。
用件は簡潔。
「5分で駅前まで来い」
だからオマエ、京都住みだろ。
なんでちょいちょいこっち居んの。そしてなんでオレを呼ぶの。
そんな疑問をぶつける間もなく切られた通話に、ほぼ無意識で焦って外に飛び出したのは10分ほど前のこと。
「……はァ、ふ……ってか、ちょうっ……がんばった方だと、思う」
「僕は5分で来いと言った」
「あー……のなぁ、人間、できっことと……っできないことが……てかちょ、ま……ちょっと息、整うの、待って」
「……仕方のないヤツだ」
「それオマエが言っちゃう?」
やれやれふぅ、と溢す赤司の横でとりあえず上がった呼吸を落ち着ける。
ほんとこの人、女王様なんですけど。
全力でダッシュしてもオレん家からココまでは最低10分はかかるって、コイツなら知ってる気がする。
身体的疲労と精神的疲労をいっぺんに感じながら、オレはハァーッと大きく息を吐いた。
そのとき、いきなり首筋に、ヒヤリと何かが宛がわれて。
「ひゃァッ……!」
慌ててそこを押さえて飛び退けば、赤司がスポーツドリンクのボトル缶を片手に驚いた表情のまま動きを止めていた。
「……今、凄くイイ声がでたな。和成」
「はあ?」
オッドアイがキラキラと輝いて見える。
え。何でそんなに楽しそうなの。
若干引き気味な視線を送れば、フッと笑われ。手にしていた缶を唐突にオレへと放った。
宙を舞ったそれを反射的に受け取る。
「飲むといい」
「……えっ?くれんの?」
「その為に買ったものだから」
「……、」
反らされた視線の先を辿りながら、オレは自然と肩の力が抜けてくのを感じていた。
何考えてるかとか、さっぱりわかんねーヤツだけど。
「赤司」
「?」
「ありがとな」
「……ああ」
やっぱりその笑顔を、キライにはなれないんだよな。
(惹き付けられ魅せられる)
(13/1/12)
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[mokuji]