お「慮る」
(【慮る(おもんぱかる)】
よく考える。深く思案する。
物事を細かに取り計らう。)
「いいんです。気づいてくれる人が、気づいてくれるので」
そう言って笑う黒子は別に強がってる風でもなく。いつも通り自然に、柔らかい表情を浮かべていた。
いつも黒子と話してて思うのは、人に気づかれないってどんな気分なんだろーなってこと。
直接聞くのも何かアレだし、そもそも聞いたところで理解できるようなもんでもないんだと思う。
そして。今日も今日とて、バニラシェイクを無表情で飲んでる黒子の影は薄い。
「高尾君に初めて見つかったとき、正直戸惑いました」
「それはコートの中だったからだろ?」
「……違いますよ?」
「へ?」
「最初に声を掛けられたのはトイレです」
「あ」
そういえばそうだ。
よく覚えてたなー。と笑えば、黒子は特に表情筋を活用させることなく「ほんとに驚いたんですあの時は」と告げた。
「まさかあんなにも簡単にボクを見つける人がいるなんて、思ってませんでした」
それは嬉しい方の驚き、なのか。
その水色の瞳からは感情が読み取れない。
かち合った視線を反らすことなく、オレは笑って見せた。
「フツーにしててオレが黒子を見失うこと、たぶんねーよ」
見失っても。
すぐに見つけ出してやる。
そう告げれば、黒子は優しく笑う。
「……ボクを見つけてくれたのが、高尾君でよかった」
(光の様に目映いわけじゃない)
(だけど、反らせない)
(13/1/11)
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[mokuji]