か「勘繰る」
(【勘繰る(かんぐる)】
勝手に気を回して疑う。
悪いように推し量る。)
ここ数日、宮地サンが当社比三割増で機嫌が悪い。
部活中にめっちゃ怒ってんのはいつものことだけど、部活終わってからも何かとにかくピリピリしてるし。
普通に接したいオレとしては正直、困ってるワケだ。
かといって何か打開策があるわけでもないから、今日もまた「お疲れさまでした」くらいしか声掛けらんないんだろーな。
とか考えながら着替えてたら、いつの間にか帰り支度を整えた真ちゃんがオレの方を向いていた。
「高尾、帰るぞ」
「え、真ちゃん早くね?」
「……オマエが遅すぎるのだよ。先に行くぞ」
「ワリ、すぐに行くから」
センパイで唯一残っていた宮地サンに一言告げて、真ちゃんは部室をあとにする。
てことは必然的に部室に残ってんのは宮地サンとオレの二人ってことで。
「……」
「………」
(……きっ、気まず……!てか、あれ……?え、えぇぇ?!)
あまりの気まずさに一瞬動きが止まりかけて。オレはふとあることに気づく。
視線を感じる。
鷹の目とか使わなくても、すぐに分かるくらい。見られている。
(え、ウソ、もしかして宮地サンが怒ってんのってオレのせい?オレなんかしたっけ??)
変な汗が背中を伝う。
違和感のないようにと着替えを続けるけど、無意識に動きが鈍くなる。
(やべえ、何も思いあたるフシがない、というか見すぎじゃね?なんか舐めるように見られてんだけど……!こえーよ!これなら怒鳴られたほうがマシだっつの!)
やっとの思いで学ランのボタンを留め終えた直後だった。
「オマエさ」
「……っ!」
宮地サンに声を掛けられた。
ギシギシと音がしそうなくらいぎこちなく振り返る。ぶっちゃけ上手く笑えてるか自信がない。
「な、なんすか?宮地サン」
「…………」
「……あの、もしかして、オレ、何かしました?」
「は?してねーけど??…………つーかオマエさ、明後日ヒマ?」
「…………え、あ、ヒマですけど?」
「じゃ、空けとけ」
え。
そのまま帰っていく宮地サンを見送って、オレは力なく床に座り込む。
「…………機嫌、悪いどころか何か超爽やかな笑顔だったんだけど……」
宮地サンが分からない。
とりあえず、もう怒ってないみたいだったから。
いいのかな。
(緊張している=怒ってるようにみえる不憫な宮地サン)
(週末、出掛けるぞ)
(13/1/11)
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