たまには甘味など如何ですか?




(びっち高尾くんと潔癖緑間サン)
(お互い無自覚初恋(ウブコイ))
(何かよくわからない甘酸っぱさを目指し迷子)
(高尾くんとの距離を測りつつとりあえず触れたい緑間サン)
(何か緑間サンに触られたら変になるから触られたくない高尾くん)
(の攻防、のプロローグ的な)








要はきもちがよければそれでいい。
恋とかそんなんよくわかんねーし。
それでもベッドにいる間はちゃんと愛し合ってるわけだし。
オンナノコ相手だと妊娠とか恋人だとかややこしいけど相手が男だとそんなめんどくさいことも無い。
がむしゃらに求められんのは悪い気しないしね。

ただ高校に入ってから……まぁ、正しくは部活始めてからだけど、ぶっちゃけセックスに回す体力がない。
これはオレの体にも心にとっても非常に戴けないことである。
つまり何が言いたいかといえばぶっちゃけ溜まっている。

今日も部活後そのまま部室に居座りたい体に鞭打って帰宅中なんだけど、雨のため一緒に傘並べて歩いているエース様がセフレになってくんないかなとか妄想する程度には溜まっている。
誰でも良い訳じゃないけど限り無くそれに近い状態で誰かに抱かれたいセックスしたい。





「……はぁ……」

「何なのだよ、さっきから」

「えー?何が?」

「自覚がないのか。その鬱陶しい溜め息」

「あー……ごめんごめん」





緑間みたいな潔癖っぽい奴がオレのしてることを知ったら、穢らわしいとか言って疎ましがられるんだろうな。
わりと至近距離で揺れる綺麗な指先はオレとは真逆って感じで。
触れるのすら躊躇うわ。

とか思ってた矢先、だった。





「高尾」

「……ッ」

「熱でもあるのか?」




信じられないことに。
その綺麗な指が添うようにオレの額から、頬へと、滑った。

ぞくりと、身体が震える。





「ひ、ぁっ……」

「……っ?!」





思わず声が出て、ヤバイと思って距離を取るけど緑間の驚いたような目がこっちを捕らえているのはすぐに分かった。
どうしよう。
これこのまま誘っちまった方が良いのか。
それとも笑って『いつもの高尾くん』で誤魔化した方が良いのか。
一瞬迷ってる間に、コホン、と態とらしい咳払いが聞こえて。





「……、いきなり触って、すまなかった……」

「……へっ?」

「っ、何でもない!行くぞ高尾!」

「えっ、あ、オイ!」





確かに、聴こえた。

その言葉に。

先に歩き出した、その背中に。

ぶわっと熱が込み上げる。





「…………なにこれ……」





触られるのなんて慣れっこで、もっと深く求め合うなんて数こなしてたはずのオレが。

あの指にたった一瞬。
たったの一瞬触れられただけでこんな、初な女の子みたいな反応。

まるで、



緑間のこと、すきみたいな、



なんてバカバカしい。








「……っ気のせいだっての……!」





溜まってるせいでこんなよく分からねー思考になってるだけに違いない。
やっぱり今日は一回誰か誘ってヤっとこう。
そんなことを考えながら、少し先を行く緑間の背中を追いかけた。





(ほら、はじまった)










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