緑間と春一番




「卒業の日に桜が満開とか!」

「まだ八分咲きなのだよ」

「いやいやこれだけ咲いてたらオレにとっては満開なの!」

「どんな理屈なのだよ……」

「ね、真ちゃん」

「何だ?」

「卒業おめでとう」

「ああ、ありがとう。……高尾も、おめでとう」

「はは!ありがと!」

「……これから、時間はあるか?」

「へ?確か、このあとはクラスの打ち上げじゃなかった?」

「……」

「真ちゃん、どっか別に行きたいとこでもあんの?」

「いや……まぁ」

「じゃ、行こーぜ」

「は?」

「あれ?オレへのお誘いじゃなかった?」

「……っ」

「アタリ?」

「アタリなのだよ」

「……。真ちゃん、この三年ですごい素直になったよねぇ」

「そうだな、その方がオマエが狼狽えると分かったからな」

「え」

「高尾」

「……あ」





ぎゅっと、手を握りしめられる。

不器用で優しい。綺麗な指先。
あの美しいシュートを放つ、神聖な指先。

その手がオレの手のひらに重なった。





今日という暖かな春の日に。

オレたちは同級生を卒業する。



そして、











(これからは二人、もっと近くで歩み始める)











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