黄瀬くんと運命と偶然の某19








ライトグレイのシーツに黒髪がよく映える。
見上げてくる夕焼けみたいな光がオレの心臓を鷲掴みにした。





「……イヤだったらすぐ言ってね」

「ん」

「たぶん止まんないけど、優しくするから」

「おお……涼ちゃんがカッコイイ」





ありがと。

そう言ってはにかむ高尾っちのオデコにキスを落とす。
変な話だ。少し前まで自分が男相手にこんなことになるなんて思ってなかったのに。





「好き、」

「ん……」

「好き。すき、高尾っち……」





唇を割って上顎のやわこいとこを舐めれば鼻にかかった声が響く。
時々薄目開けてこっち窺ってんのが何か可愛い。
シャツの裾から右手を忍ばせ、温かい高尾っちのお腹を味わうように這わせる。





「ふ、ひゃ、ははっ、それっ……くすぐっ、た!」





逃げようと身を捩るから少し意地悪のつもりで体重を掛けて動きを戒めてやると、ケラケラ笑いながら「…ふは…っ!だめっ、ダメだって!」と軽い抵抗。でもじゃれてる程度だったからこっちもふざけて耳をぱくりとくわえた。





「うぁっ」

「あ。反応イイっスね。もしかして耳でも感じるタイプ?」

「ッ知らな……ン、ぁっ」

「ははっ。耳犯されんのハジメテなんだ」

「あっ、やぁ、てか……っまず男に犯されんの、ハジメテだから……っわかん、ねぇッ……んぅ、っ」

「……っ」





腰にクる声。反応。言葉。全てがオレを煽ってくる。
あんだけ好き勝手妄想してた高尾っちの恥態がいま目の前に。

それを再認識した途端、自分が思ってた以上に興奮してることに気づく。





「……っ!り、涼ちゃん……あ、たってるわ……」

「え?もうだいぶ前から勃ってるけど」

「ブフォ!やっ、「勃ってる」じゃなくて「あたってる!」っつったの!」

「あ、えっ、ああ……まぁどっちもあんま変わんないっス」

「ハハ…っ、確かに、そうだけどッ」





楽しそうだ。こんな状況でも、笑ってられる高尾っちすげえ。





「なんか……高尾っち相手だとスマートにいかない……」

「えっ?あ、ごめん思わず喋っちゃってるけど、ヤりにくい?萎える?」

「いや、無言でいられるよりかは全然!笑っててくれてる方がいいんスけど……」

「……」





いちいち可愛くて集中できないのは否めない。とは口に出さないけど、少し考えるように視線を動かしたあと。
高尾っちはさっきまでの無邪気な笑顔が嘘みたいに、扇情的にわらった。





唇が綺麗な弧を描いて。








「いいよ?遠慮いらねーから、涼ちゃんのぜんぶで、オレを犯してよ」

「……ッ、」








オレもその挑戦的な視線に応えるように、微笑みかける。








「高尾っち……覚悟し」








ヴー、ヴー、ヴー








え。








「ブファッ!ちょっ、けっ、携帯……っ空気、読みすぎ……!!」





絶妙すぎるタイミングでベッドサイドの携帯が震えて、オレは思いっきり自分のそれをぶっ叩く。
オイ。オレの携帯ならちょっと空気読めよつうか何でサイレントにしとかなかった。

ベッドに丸まるように笑い転げ始めた高尾っちを横目に、着信してきた忌々しい相手を一瞬確認する。





『着信:青峰っち』





ブチィッ





「ふっ、くく、…ひぃ……はぁ、……はーっ、やっべ笑ったわ……電話出なくて良かったの?」

「間違い電話っス」

「そ…」





ピンポーン





ちょ。なんスか。何なんスか!
せっかくのオレらの初合体を邪魔する不遜な輩は!赤司っちの白馬に蹴られて死ねよいやお願いしますまじで!!!!!

もうこの際居留守決め込んで続行しようと高尾っちに覆い被さったとき。





ピンポーンピンポンピンポンピピピピンポーンピンポンピンポーン




「ぶっ!り、涼ちゃ……っリズミカルなチャ、チャイムが、呼んでっけど…!」

「ッッッ!青峰っちぃぃぃぃぃ!!!!!」










(世の中、そう甘くないのだよ)

(誰かが鼻で嘲笑ったのが聞こえた気がした)








(築いたフラグは壊れ易いのでご注意ください)







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