黄瀬くんと運命と偶然の某18
成り行きというか。ちょっとその場のテンションとかもだいぶ手伝ったのはこの際言わないで。
「……んっ、ふぅ…っ」
「……、は、ッ高尾っちの声、まじえっろ……ンっ」
「っそ、のまま…ぁっ、そのセリフ、っりょー…ちゃんにかえす、んぅ」
とりあえず家までよく我慢しました。ってのを褒めて欲しい。
オレの家に引っ張り込んでドア閉めた瞬間振り返って壁ドンからのディープキスにも引くことなく、高尾っちは自ら口開けてくれて。躊躇いがちに伸ばされた舌に自分のを絡めたら、ぎこちない動きながらも同じようにこたえてくれた。
幸せすぎて死にそう。
沸いたままの脳内で何とか高尾っちが苦しくないようにとだけ考えを巡らせる。頭を抱えて腰を抱くようにすれば、また自然とオレの首に腕が回された。ほんとに、恋人同士みたい。いやみたいっていうかホンモノなんだけど。
夢中で口内を貪ってたら、ふと視線を感じて動きを止める。
「……、高尾っち……?」
高尾っちの瞳が少し不安気に揺れるから思わずつられる。
あれ?オレ、キスには自信あったんスけど。ここにきてキス下手とか言われたら立ち直れない。
背中に変な汗をかきながら神妙に名前を呼べば、そっと頬に手を添えられた。
「涼ちゃ、ん……っき、つくない…っ?」
「きつ……何が?」
「……や、体勢。キツそうだけど、大丈夫?」
「あっ、……えっ?ちょ、……高尾っち……ここにきて、オレの、心配とか」
「え?」
もう本格的に頂いてもいいですかこのひと。
「わっ、」
「もうちょっとがんばれ、オレ」
「えっ、ちょ、誰に話し掛けてるの涼ちゃん……っ」
「オレのなかの理性と言う名の戦士達っス」
「 戦 士 ブフォ!!」
爆笑する高尾っちの手を引いて向かうは言うまでもない。廊下を真っ直ぐ行った先。
ドアを開けたら微かに高尾っちが息をのんだのが分かった。
「……怖いっスか?」
「えっ?」
振り向いた先にあったのは予想外に明るい表情。
え?ここはハジメテに不安がる高尾っちをオレがかっこよく「優しくするよ」って宥めるシーンじゃ。
ポカンとするオレに、いつも通りの笑顔で。
「いや、涼ちゃんの匂いでいっぱいだなぁって」
そう、彼は宣った。
このタイミングで。
「〜〜〜…ッ!もうどーなっても知らねー、」
「へ?」
アンタまじ煽りの天才っスわ。
ベッドに押し倒したとき、自分以外の香りが鼻腔を擽って。そういえばこの部屋で誰かとスんのは初めてだな、と頭の片隅で思った。
(重ねた唇が燃えるように熱い)
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