緑間の真意を知る


(※緑間と月を眺めるの続き)





「月が綺麗なのだよ」と。

確かに緑間はあの時、そう言った。








「……つまり、まあ夏目漱石が生徒に言った言葉は日本人の奥ゆかしさを表している、ということになるな」

「……」

「「I love you」の訳に「月が綺麗ですね」なんて、漱石も洒落たことを言ったもんだと先生は思う」





現代文の授業中。

「それじゃ遠回りすぎて伝わらないでしょー」とか言ってるクラスメートをヨソに、オレはとっさに隣の席を凝視してしまっていた。

そこにはいつもと変わりなく姿勢よく授業を受けてるエース様。

こちらを向く気配はなく……てか真ちゃんが授業中に余所見とか見たことないけど……あまりにも微動だにしないから、自意識過剰かとオレも先生の方へ視線を戻す。



数日前。雪が降るかもっつって珍しく二人で並んで帰った日。
似たような言葉を、オレは真ちゃんの口から聞いた。

あんときは、単純に月が綺麗だなーって思ったままを言っただけだと思ったけど。
もし、何かしらの含みを持たせていたとしたら?





(オレちょう恥ずかしいヤツじゃね……っ?いや、むしろあの場合あっちのが恥ずかしいのアレ??)





咄嗟にノートをとるフリをして机に顔を伏せる。





(というか待て待てオレ。そもそも緑間とオレは単にチームメートっしょ。何を含むことがあんだって……!)





なんで。

なんでオレは、こんなにも動揺しているのか。



俯いた状態のまま、チラリと隣の席を盗み見る。





「……ッ」





どくん、と。



心臓が大きく脈打った。





緑間が、あの授業中も人事を尽くして余所見なんてしないはずのヤツが。
間違いなく、オレの方を見ていたから。





「……、しん、ちゃ……?」





開きかけた口は、真ちゃんの「静かに」というジェスチャーで止まる。

フッ、と真ちゃんが少しだけ微笑った気がした。





(授業が終わるまでこの状態とか、ぜってームリ……)





思い立ったオレが、ノートの切れ端に書いた言葉に。
真ちゃんが思いっきり赤面するのを目撃するのは、数分後の話。








(『いつも、月が綺麗です』)
(いつだって、大好きな君へ)



(13/1/10)



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