宮地サンと帰り道
「宮地サーン!!」
「……オマエなんでそんな元気なの?バカなの?」
「ちょ…!」
一年でレギュラーをもぎ取った後輩は、いつも飄々として掴み所がない奴だ。
エース様とか言われてるあの偏屈極まりない緑間の世話だって、苦にすらせず。むしろアレは確実に楽しんでる。
高尾が精神的に参ってるとこなんて、ぶっちゃけ見たことねーし。つかまだ一年足らずの付き合いだが。
や、待て。そもそも弱ってるとこが見てーわけじゃねぇ。
「今日は緑間のお守りじゃねえの」
自分の混濁した思考を断つように、帰り道すがら追いかけてきた高尾にそう声を掛ければ屈託ない笑みが返ってくる。
コイツはほんっと。いつも愉しそうだなオイ。
「真ちゃん、今日のおは朝占い順位が悪かったからって急いで帰っちゃって」
「ハッ、もっと緑間に不幸が降りかかれ」
「宮地サンひでぇ」
カラリと笑い飛ばすオマエもよっぽどだろ。
「つーわけで。オレ一人だと寂しくて死んじゃうかもしれないんで宮地サン一緒に帰ってくださいよ」
「うさぎか」
「思わず愛でたくなる可愛さでしょー?」
「燃やすぞ」
「ははっ、すみませーん」
口では色々と言いつつも、自然と並んで歩き出すオレよりも一回りちっせえ後輩の存在に不快感は抱かないから不思議だ。
たぶん、それなりに。オレなりに。
コイツを認めてるってことで。
言えば調子に乗るのは目に見えてるから、ぜってぇ言わねえけどな。
くしゃりと頭を掻き回せば、驚いた顔で見上げてくる。
「わっ…ちょ、なんスかっ?」
「うっせ」
ま、生温いくらいがちょうどいい時だってあるってことだ。
(心地好いキミの温度に浸る)
(12/12/29)
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[mokuji]