黒子に言いたいこと
「高尾君の目、とても綺麗ですね」
「そちらこそきれーな水色ですね」
にんまり笑ってみせたら少しだけ黒子の無表情が崩れた。
「今日はどうしたんですか」
「またまたぁ、言わなくてもわかってるくせに」
薄っぺらい唇のすぐ横にキスをひとつ。そのまま滑るように耳元の方へと舌を動かせば黒子は水浴びした猫みたいにぶるりと震えた。
「これじゃいつもと逆だな」
「積極的なのはとても喜ばしいんですが、」
「今日はねーオレが黒子を喜ばせる日なの」
「……?キミと会える日で嬉しくなかったことなんてありませんよ」
「……っ」
澱まない透き通った水みたいな瞳に自然と熱くなる頬。ぎゅっと抱きしめたらそっと背中に腕が回された。
結局いつも喜ばせられてんの、オレの方なんだよな。
「高尾君の存在は、ボクにとって暖かい日溜まりみたいです」
「っ、黒子のが……そうだっつの」
「え?」
「そりゃバスケじゃ影とか言ってっけど、人間としては空みたいだよ」
「空……?」
不思議そうに首を傾げるからちょっとだけデコをこつんとぶつけてやる。
「広くて柔らかくて透き通ってて、掴めない。でも、いつも見守ってくれてる。いつでも、受け入れてくれる」
ちょう照れ臭かったけど、ここで言わねーと男が廃る。
見つめた先の鮮やかなブルーが少しだけ瞠目したあと、穏やかに和らいだ。
「……ありがとう、ございます」
「はっ?」
正直オレがお礼言われるようなことじゃない。でもやっぱり、たまにはこうして口に出さなきゃだよな。
静かに微笑んだままの黒子の指がオレの頬に添えられた。
「幸せです。こうやってボクを見つけて、見つめて、伝えてくれる人がいることが。何よりの幸せだと、感じます」
手のひらが重なる。
笑みを交わす。
「黒子」
「はい、高尾君」
「おめでと、あと、ありがとう」
「こちらこそ」
((キミの存在に最大の祝福と感謝を))
(14/2/3)
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