テツに伝える


(※「テツの温度」の続き)









見失ったものを見つけるのはひどく難しい。

だからもう。間違わないと誓ったら、アイツは笑った。










「……っ、!」

「……、どうしたんですか?」





目が覚めた瞬間無意識で掴んだ手首の感触。いつかと同じ生温い温度に安心感を抱く。
無くしたりしていない。
確かにここにある。

それでも夢のなかの距離感は過去のオレを責め立てるように胸を燻った。





「テツ」





名前を呼べば、昔と変わらない水色の瞳がオレを見つめてくる。
いつでも消えてしまいそうなその存在にそっと手を伸ばす。
何の抵抗もなく、テツはオレの腕のなかに収まった。





「……青峰君?」





言葉で伝えるのは、簡単なようで難しい。

だから以前。オレは体温から伝わればと願った。





「青峰君、大丈夫です。ボクは……ここにいます。ちゃんと、聴いていますよ」





静かな声が、すっと胸に落ちてくる。

体をそっと離したらテツのまっすぐな視線をもらう。
ふっと力が抜けて、笑みが零れた。





「……、何ですか」





照れくさそうに反らされた視線を捕まえるように。
両頬に手を添える。





「……テツ、ありがとな」

「……っ」

「もう、見失ったり、しねえから」








例え見失ったとしても。








(すぐに、見つけに走るよ)




(2014/1/8)



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