黄瀬くんと運命と偶然の某16








待ち合わせ場所に早めに着いたから近くのカフェで時間を潰す。
カフェからはちょうど通りが見えるけど、待ち人はまだ来ない。
時計が10分前を指したところで少し不安になり始めた。





(……、遅い)





いつもオレより早く待ち合わせ場所に来ていた高尾っち。そんな高尾っちが待ち合わせの10分前になっても現れない。
これが今まで遊んでたような女のコ相手なら特に気になんないけど。





(わりと平気な顔して遅刻したりとかあったな……)





自分が可愛いって自覚あるコなんかは大抵謝ったら許してもらえると思ってる。
その“許されて突然”みたいな感じがぶっちゃけすげえ勘に障ってたわけっスけど。
いやでも高尾っちはそういうコ達とは違うって思うのはオレの勝手な期待かもしんないし。
いやむしろ高尾っち事実可愛いし。「遅れてごめんね?」なんて言いながらほっぺちゅーとかされたら許しちゃうかも。高尾っち可愛いから。

あれ何の話だったっけこれ。

とにかく、今までのことを考えると何かあったんじゃないかと、待ち合わせ時間までまだあるけど心配になる。








「りょー、ちゃん……っ!」





ぼやっとすっかり冷めたコーヒーに視線を落として物思いに耽ってたら、待ち望んでた声がオレを呼んだ。





「あ、たか」

「っごめんもしかしてすごい待った?!」

「え、いや、そんなことないっスよ」

「でも待たせたことに変わりないよな、ほんとごめん!」





こっち向いて頭を下げた高尾っちに慌てて立ち上がる。





「やっ、別に気にしてないって言うと嘘になるんスけど、あ、ちがうっス!待ってたことは全然平気……っただ高尾っちが遅いの珍しいからちょっと心配だっただけで!」





そこまで言ってから、少しだけ低い位置にある瞳が驚いたように此方を見上げているのに気づく。

オレが気づいたことに、気がついたらしい高尾っちが、ふにゃりと笑った。








「涼ちゃん、優しいね」








ああもう。ほんとなんでこんな可愛いんスかこのひと。
やっぱり高尾っちになら何時間待たされても許す自信ある。

思わず抱き締めそうになる体を何とか戒めて、オレも笑顔を向けた。





「行こっか、高尾っち」

「うん」





自分のなかの価値観がゆっくり変わっていく。



このひとに変えられてく。








(それが、すごく心地いいんスよ)






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