宮地サンと朝の一コマ
「みーやじサンっ」
「あー……」
「おはようございまーす!朝ですけどー!」
「……、るせえ……」
ふかふかの羽毛布団にくるまって眠る宮地サンはそれはそれは不機嫌に目を閉じたまま返事をした。
昨日の夜に「明日行きたいとこあるから起こせ」っつったの誰だよ。
「宮地サン!朝ですってば!行くとこあるんでしょ?」
「……それは……いまこのじかんをぎしぇーにしてまでやんなきゃなんねえことなのか……?」
「いや知りませんよ」
ドコ行くかとか聞いてねーもん。
失笑とかしたらいつもの宮地サンならキレる所だけど、よっぽど眠いのか低血圧のせいなのかは分からない。ただ朝の宮地サンは機嫌は悪いが反応は鈍い。
「みっやじサーン!!」
「……」
「みーやーじーサーンっ!!!」
「…………」
ダメだこれ。
完全に無視しだしたよこのひと。
さっきスルーしたけど呂律回ってなかったし。犠牲言えてなかったし。
ほんと酒飲んだときと眠いときの普段とのギャップすごいな。いやかわいいとか思ってないからね!かわいいからちょっと甘くみようかなとか思ってないからね!!
って誰に言い訳してんだオレは。
何かもうめんどくさくなってきたので揺さぶってた手を止めてそのまま羽毛布団の隙間に突っ込む。
一瞬だけ訝しそうに視線を寄越したの、オレには視えてますからね宮地サン。
「……お邪魔しますよっと」
「……、なにしてんだ高尾オマエ」
「宮地サンが起きてくんないならオレが起きててもしょーがないんで一緒に寝ようかなって」
「はぁ?」
「宮地サンにだいしゅきほーるどぎゅーっ、なーんて……」
「……っ」
あれ?
予想ではこの辺で目が覚めた宮地サンに布団から放り出されるはずだったんだけど。
抱きついた胸板から少し視線を動かせば、なぜか顔を真っ赤にした宮地サンがいた。
「えええっ?」
「……ばっ、見んな!!」
「いまどこに照れる要素あったんですか?!」
「うるせえ!目え覚めたからさっさと出ろぼけ轢くぞ!!!」
「えええ……?まじ理不尽……」
渋々ベッドから降りようとしたらクイと手首を引かれて。
油断してた唇に思いっきりキスされた。
「……宮地サンのツンとデレのタイミングが掴めなさすぎて心臓に悪い……」
「うっせ、デレてねーよ。あとさっきの冗談でも他のヤツにやんなよ?」
「さっきの?」
「だっ、だいしゅきホールド」
「ぶは!」
このひとほんと可愛いな!
そそくさと洗面所に向かっちまったその背中に零れた笑みは、しばらくおさまりそうにない。
(13/11/29)
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