黄瀬くんと運命と偶然の某15
と、いうわけで。
「おかげで両想いになれたわけなんスけど……高尾っちのリアクションが可愛すぎてキス以上先に進めないっス!!」
「そうですか。とりあえず爆発したらいいんじゃないですか」
ズゴー、と音を立ててバニラシェイクを啜る黒子っち。
視線が冷たい気がするのはたぶんテンプレだと思うからスルーで。
「いや切実なんスよ…!ぶっちゃけキスもあれっきりだし触ろうとしたらさらりと交わされて「涼ちゃん…もー、ここ外だよ…?」とか可愛く小首傾げられてくっそ高尾っちやっぱあざと可愛すぎる!」
「高尾君が可愛すぎることだけは理解できました。……それにしても昔のキミとはまるで別人ですね」
「へ?」
今日はじめて視線がぶつかった黒子っちは、呆れたような、それでいて優しい目をしていた。
「前々からうざいなと思っていたんですが今は輪を掛けてうざいです」
「え」
相変わらず情け容赦ない斬り込みだけど、そこにあったかさを感じるのは何だかんだ言いながらオレの話を聴いてくれるからだろう。
こないだ試しに青峰っちに「好きなひとがいるんスよね〜」って話したら「あ?グラビアアイドル紹介してくれる?」「いやちげーよ」ってなもんで最初から聞いてなかったし。
それにこの人が背中ド突いてくれたおかげで高尾っちに告白出来たわけで。ほんと感謝してやまないんスよ。
「……でも、前のキミより今のキミの方が人間味溢れてて、ボクは好きですよ」
「……黒子っち……!」
黒子っちがふんわり微笑むのとかレアだな、と思わず見惚れてたら。
一瞬にしてまた元の無表情に戻ってしまう。
ああ、勿体無い。
真顔のままストローを口に含むと、黒子っちは淡々と告げた。
「と、こんな感じでそれらしい空気にしたらキスの一発くらいできるんじゃないですか?」
「黒子っち発言が超男前!!」
「というか、好き嫌い別にして黄瀬君がうざいことに変わりはないんですが」
「……。もう泣いていいっスか?」
「困りますやめてください」
とりあえず。
アドバイス通り雰囲気作りからやってみようかな。と。
黒子っちご所望のバニラシェイクおかわりを買いにレジに並びながらオレは次のデートに思いを馳せていた。
(決してパシりではない、という主張)
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