黄瀬くんと運命と偶然の某14







「……っ」





痛みを飲み込むような息遣いにハッとして振り返れば、困ったような表情の高尾っちと目が合った。





やばい。オレ、なにして、た?





強く握り締めたその手首から急いで力を抜く。
固まって立ち止まるオレに眉尻を下げたままそれでも高尾っちは笑みを絶やさず。





「涼ちゃんて意外と直情型なのな」





そう言って少し距離を詰めてオレの手に触れた。





「なん……っで、怒んないんスか?」

「え、何で、って……なんで?」

「いやだから、オレ、緑間っちとの会話遮ったし、なんかムリヤリ引っ張って来ちゃったし!」

「うん…まぁでも、別に怒るほどのことじゃなかったし?」





あっけらかんと言ってのけるから何も言いようがなくて、触れた掌を包み込むように握り返した。
もちろん払い除けられたりしないしイヤな顔もされない。

もう、ほんと、何なんスか。





何で、アンタはそんなに。







「……、涼ちゃん?」





無防備なその手を今度は優しく、でも振りほどけないよう指を絡めて。オレは人気の少ない道へと高尾っちを誘う。
見覚えのあるストバスのコートがある広場のフェンスにそっとその体を押し付けたところで、やっと不思議そうな顔をされた。



遅すぎるっスよ。



覆い被さるように身を寄せたら射抜く視線が見上げてくる。





「高尾っち……」

「え?いや、なに急にどうし……、んぅ…っ」





開きかけた唇に自分のを重ねて思いきり深いキスをする。
高尾っちの唇は少しだけ冷たかった。
油断してる間に無遠慮に舌を入れてもやっぱり拒否られなくてオレはそのまま生暖かい口腔を侵す。
きもちくて、今まで感じたことのない変な高揚感が心を満たしていく。

見下ろすとがんばって息継ぎのタイミングを探ってるっぽい高尾っちと目が合った。





「……っ、ね、高尾っち…、ン……」

「……ふぁ、は…っ、え?な、……に?」

「高尾っちは、……オレのこと、好き?」





何度も女のコに聞かれたことのあるセリフ。これを自分が言う日が来るとは。しかも男に。
もし次に聞かれたときは、もっと優しく対応してあげようと。
高尾っちの返事を待つ異常な緊張感の中でオレは思った。








「……少なくとも、こんなエロいキスされて感じちゃうくらいには、涼ちゃんのこと好きみたい」








そう言って無邪気に笑った高尾っちを、思いきり抱き締めたのは言うまでもない。








(はじめましての両想い)





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