黒子と悴む手のひら
「うぉぉ……!」
「どうしたんですか高尾君……怖いですよ」
「真ちゃんにメールしてえんだけど寒すぎてうまく操作できない……っ」
高尾君と出掛けた帰り道。
懸命にスマホと格闘していた彼に声を掛ければ、もどかしそうな声を出す。
よく見れば、彼の掌は赤くかじかんでいて。確かに携帯端末を操作するのには不具合がありそうだ。
「?以前、スマホ用の手袋買ったって言ってませんでした?」
「忘れたの!」
「……、そもそも緑間君にメールする必要ないんじゃ」
「ブフォ!……ちょ、黒子、いま笑わせんなって……!ただでさえ手がゆーこときかねんだからっ」
なぜか高尾君といると安心するけど、イコールで緑間君の話題が上るのが僕としてはあまり面白くない。
「部活の連絡メールだから」と笑う彼を見ていたら、不意に思いついたことがありすぐに実行した。
「おぉ…っ?どした??」
「いえ、こうすれば少しは暖まるかと」
ギュッと彼の掌を包む自分の両手に力を込めると、少しだけ驚いていた高尾君はすぐにはにかむように笑った。
「意外と体温高いのな、黒子」
「……、高尾君は意外と低いんですね」
「ははっ。じゃ、ちょうどいんじゃね?」
寒い冬も、案外悪くないと。
彼のあったかい笑顔を見る度に思う。
(分かち合う手のひら)
(13/1/9)
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