黄瀬くんと運命と偶然の某10








結論から言うと。
高尾っちと緑間っち付き合ってなかった。
あと片思いでもなかったっス。










『え、いま付き合ってるひと?あははっ、いないいない好きなやつもいないのに!』





笑いながら質問に答えた高尾っちに思わず息をつきそうになるのを堪える。
あからさまに安心した素振りとか、露骨すぎるだろ。いやでも意識してもらうなら露骨なくらいでイイんスかね。

頭のなかでぐるぐる考えを巡らせてから、オレは意図的に悩ましげな吐息を溢してみせた。





「……よかった、」

『涼ちゃん?』

「あっ、いや、何でもないっスよ!」





ちょっとワザとらしかったか。でも大抵の女のコはこれやったら勘違いしてたし。やってみるのはタダ、っスよね。
高尾っちの出方を窺っていたら少しの間を置いて、明るい声がオレを呼ぶ。





『涼ちゃん、気にすることないって!』

「……え?」





まるで励ましのような言葉に首を傾げれば、受話器越しの声が優しく語り掛けてくる。
ん?ていうか、高尾っち、いまなんて。

気にすること、ない?





『部活とか、モデルの仕事もあるんだから、彼女とかつくってる暇ないんでしょ?』

「へ?」

『高校の間くらいはさー、バスケに全てを捧げてまっす!とか言っといても大丈夫だと思うんだよねオレ的には』

「え、っえ?」

『ん?涼ちゃん彼女いない仲間さがしてたんじゃないの?』



























彼のなかで一体どういう方程式が組み立てられたのか。
受話器越しに『オレが仲間1号?』と笑っている高尾っち。
意識してもらうつもりがなんかよくわかんない仲間意識芽生えちゃってんじゃないスか!違う!仲間意識じゃないんスよ!





「そうじゃなくて……!」

『うん?』

「そ、そういう、あれじゃ……なくて」

『?あれ??』





咄嗟に口を挟んだけど、何とも言いようがない。



というか、このひと、もう、告白でもしないと気づかないんじゃないか?



一瞬浮かんだ考えに顔が熱くなる。



告白?

だれが、だれに?



オレが?





高尾っち、に?





「……っ」

『涼ちゃん。もしかして、好きな子がいるの?』

「はぁぁぁ?!!」





思考を予想外すぎる言葉でぶった切られ思わずダッサイ声が出る。高尾っちと話してるといつもこうだ。
何かいつもみたいに上手くカッコつかない。

揺さぶられて、惑わされて。

でも。
それを悪くないと思っている自分がいるから、もう末期。





不意に見た時計が夜の7時を指していて、それを見た瞬間にオレは無意識に口を開いていた。





「高尾っち。今から会えないっスか?」

『へ?』

「ううん、会いたい……会いに行くから待ってて!」

『え、え…っ、涼ちゃん?』





何か言い掛けた高尾っちの言葉を遮って、オレは財布だけ引っ付かんで外へ飛び出す。








もう、カッコイイ黄瀬涼太は終了っスよ!



ダサくてもいいや。





たぶん、それでもキミは、



笑ってくれるでしょ?








(動き出す)







[ 179/284 ]

[mokuji]

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -