黄瀬くんと運命と偶然の某(反転)


(※高尾くんサイド)






興味、好奇心、共感、好感。

理由なんて後付けばっか。















「黄瀬?……そうだな、シャラシャラしているのだよ」

「ブフォ!え、ちょ、なにその擬音初めて聞いたんだけど……っ」





一笑すれば不愉快そうに眉を潜める真ちゃん。
いやでも実際『シャラシャラしてる』ってどゆこと?チャラチャラじゃなくて?





「えっとつまりチャラい、じゃなくてシャラいんだよね?」

「……、つまりそういうことだ」

「聞いといてなんだけど真ちゃん、真顔で頷かれてもよくわっかんねーわ」





ゲラゲラ笑いながら自主練に戻るオレを、エース様が不審そうに見ていたなんて知らない。








黄瀬くんのことはわりと一方的に知っていたけど、話したのはこないだの合コンが初めてだ。彼のなかでオレの存在が認識されたのもたぶんあの日が初めてだと思う。

もっと軽いキャラなのかなーっていうオレの想像は見事に外れて、実際に目にした彼はどことなく冷めた感じだった。
合コンにも半ば強引に誘われて断れずに来ちゃったんじゃないかと勝手に予想してる。

それでも、そういう場面をそつなくこなしそうな黄瀬くんが、ずっと気も漫ろな様子だったから気になって。
結局、一次会なるカラオケが終わるまでオレの目はずっと黄瀬くんを捉えていた。



そして帰り道。
黄瀬くんの様子も気になりつつそれでも当初の予定通り何事もなく去ろうとしたオレを呼び止めたのは、その黄瀬くん本人で。
アドレスを聞かれて喜んで交換したあとに突然キスされて、オレの思考はそこで一回、完全にシャットアウトされたんだ。

いや、だってまぁ、ほら。
キスって。

あれ?黄瀬くんって帰国子女的なやつだったっけ。
離れてく整った顔は驚愕に染まっていていやいやその表情すんのどっちかっていうと唇奪われちゃったオレだよね、フツー。とかぼんやり考えてたら。





「ま、また連絡するっス!」





慌てたようにその場を立ち去った黄瀬くんの背中を、無言で見送るはめになった。










「わっかんねーなぁ……」





アドレス帳に新たに記載された『黄瀬涼太』の文字を指でなぞり、小さく呟く。
男が男にキスすんのって罰ゲーム以外の理由があんのかそこんとこ誰か教えて欲しいんですが。
意図が読めないし、そもそもなんか驚いてたし。

あ、もしかしてオレあそこでうまく回避するべきだったの?
やっべえもしかしてオレが避けなかったから唇ぶつかっちゃって黄瀬くん気まずい感じにさせちゃったの?
いやでもあれは明らかに不意打ちだったし黄瀬くんから仕掛けてきたよな。

とりあえず特別嫌でも不快なわけでもなかったから次に会ったときの黄瀬くんのリアクション見て今後のオレの方針を検討しようと思う。





「うん、そうしよ」





枕元に放ったケータイが黄瀬くんからのメール着信を知らせるのは、すぐあとの話。








(ゆっくり確実に縮まる)





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