黄瀬くんと運命と偶然の某6








オレは男を好きになったことなんてないしこの先も好きになる予定なんてない。
しつこいようだけどオレはホモじゃないっス。










「あ、黄瀬くーんこっちこっち!」

「……っ」





待ち合わせ場所には女のコじゃないんスからと自分に言い聞かせギリギリにしか向かわなかった。
だから、先に着いて待っていたらしい高尾がこちらに気づいて手を振る姿をモロに見てしまった訳で。





(かっ、可愛……!)





ピョコピョコ跳ねてなにやってんスかアンタは。もう意味わからん可愛すぎる。
終いには軽快に駆け寄って来る満面の笑顔から慌てて目線を反らした。





「おはよ、黄瀬くん!」

「、はよ、っス」

「いい天気になってよかったねー!」

「そ、っスね」





そんな、無邪気に笑わないでほしい。
オレはつい先日、アンタのこと考えながら女のコ抱いたっつうのに。
変な焦燥感と罪悪感に駆られながらの必死の作り笑いとか。“皆に優しく平等な黄瀬くん”が聞いて呆れる。
若干挙動不審なオレに気づいたのか、高尾はいつかのように距離を詰めた。と、思った次の瞬間。

オレの頬に、触れる、手。





「黄瀬くんもしかして具合悪い?」

「……っ平気っスよ、ちょっと寝不足なだけで」

「そう?」





さりげなく、気遣われるように頬を撫でた手に自分のを重ねる。
普段なら人に触られるなんてまっぴらなのに。
あったかい掌が心地よくて思わず委ねそうになる自分に気がついて、慌てて手を離した。





「もし体調が悪かったりしたら、気をつかわないで言ってよ?」

「了解っス」





……しかし、この人。ほんとなんなんスかね。
オレにキスされたこと、忘れてるのかなかったことにしてるのか。
どっちにしたってこちらのパーソナルスペースに踏み込んでくるこの無防備さ。
ちょっと手を伸ばしたら、簡単に捕まえられそう。





「じゃあ、行こっか!」








その笑顔に騙されたりなんか、しねーよ。

とか自分に言い聞かせてる時点で、やっぱ、オレのが引っ張られてる気がしたけど。

気づかないふりで歩き出した高尾のあとに続いた。








(温もりを渡されて)





(13/9/18)




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[mokuji]

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