黄瀬くんと運命と偶然の某5








「たかお、かずなり」





珍しく予定のない放課後。
家のベッドでゴロゴロしながらケータイを弄る。
アドレス帳にいちばん新しく入ったその名前を静かに読み上げただけで、先日の件を思い出し下半身が疼いた。まさか、高尾のことを考えながら女のコとヤるなんて。





「変態みたいじゃんオレ……」





勢いよく体を反転させて枕に顔を埋めたら、手元のケータイがピッと音を立てる。
何か間違えて押したかなと画面を見た瞬間、固まった。

呼び出し中。の表示。

機械的な音が直ぐに途切れ、通話、に変わったそれにもオレは上手く反応できない。
ケータイから『もしもし?』と聞き覚えのある声がした。
信じられない思いで手の中のそれを見つめていたら、もう一度『もしもし、』と声が漏れてくる。
弾かれたように通話に応じた。





「あっ、も、もしもし!」

『あ、よかった。黄瀬くんだよね?初電話だー』

「……っ」





明るい声色が直接耳に響いて、背中に決して不快じゃない“何か”が走る。
ヤバい。これは、思ってたより。やばいやつかもしれない。
いや、何がと聞かれてもオレにも分かんないんスけど。あの、まぁ、大方、下半身的な意味で。





『黄瀬くん?』

「あっ、じ、実は!ケータイ弄ってたら、間違って高尾くんにかけちゃったんスよ!」

『え、』

「ご、ごめん!」

『ぶは!まじか!黄瀬くんまさかの天然……っ』





違う。とは、言えない。
ケータイ越しの高尾の笑い声は何となく心地良くて。つられるように、オレの口からも笑みが零れた。





『あのさ』





柔らかい空気に浸っていたら、高尾が静かに話し始める。
「ん?」と自分の口から出た相槌は、やっぱり想像してたよりだいぶ優しかった。





『前に家まで送ってくれたじゃん?そのとき、オレ、もしかして何か黄瀬くんの気に障るようなこと、言った?』

「えっ」

『もし、何か言ったなら、謝るし、次から気をつけるから』





心臓の辺りが、ぎゅっと締め付けられたような気がした。





『また、黄瀬くんと会えたらなぁって』








(夕方6時の微睡み)





(13/9/15)




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[mokuji]

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