黄瀬くんと運命と偶然の某3







「家まで送ってもらってごめんね」

「いいんスよ、オレが好きでしたんだし」

「ぶは!黄瀬くんちょう紳士!」





あれから高尾と近くのゲーセンで一通り遊んでマジバでダベってちょっと先のストバスで体動かして。
辺りが暗くなってきたのでそろそろ帰ろっか、ってなったのち今、高尾ん家の前にいる。
って何オレ、充実した休み満喫しちゃってんスか意味分からん。

暗がりでも分かる橙色の瞳がこっちを見上げてくるから。無意識に鼓動が速まる。





「あの合コンのとき、やっぱり調子悪かったんだね黄瀬くん」

「え?」





こてん、と首を傾げるその仕草にくっそあざといでも可愛い。と心の中だけで呟きながら、オレは言葉の続きを待った。





「真ちゃ……緑間から黄瀬くんは女のコの扱いが上手いって聞いてたのに、何か上の空だったっしょ?あの日」

「緑間っち……?」





予想外の名前が高尾の口から飛び出たことに驚きを隠せない。
何とも言えずにいたオレに、高尾は変わらず穏やかに話を続けた。





「オレ、秀徳バスケ部なんだ。で、緑間はうちのエース様」





その声音の柔らかさが何を意味するかなんて。

聞かなくても何となく察しがついた。





胸のなかにどす黒いなんか不快なもんが渦巻いて、息苦しくなる。





何も言わないオレを不思議に思ったのか、高尾が少しだけ近づいて距離を詰めてきたのが分かった。





「黄瀬くん?黄瀬くんは海常のエースなんだよね、もしかしたらどっかの試合で会うかもしんないよな」

「ああ、そう、っスね」





思ったより低い声が出て自分でも驚く。

なに勝手に期待して、舞い上がって、落胆してんスか、オレは。





勘の良さそうな高尾がオレの変化に気づかない訳はなかったけど、何か言われる前にオレは「じゃあ、」と踵を返した。








ほら、一時の気の迷いなんて。イイ結果を生むはずがない。








(離れていく元の距離)





(13/9/15)



[ 172/284 ]

[mokuji]

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -