黄瀬くんと運命と偶然の某


(※黄瀬くんスレてます)









もうこれは、運命だと思った。










「頼むよ黄瀬!もう女子らに黄瀬来るって言っちゃったんだよ!!」





ふざけんなよ何勝手なことしてんの。

クラスメートからの頼みに心の中で悪態をつきながらも、“誰にでも優しい黄瀬涼太”は笑顔で「仕方ないなぁ次はないっスよ!」と答える。これはもうオレのマニュアルみたいなもん。

どうせモデルが来るっつってランクの高い女のコ呼ぼうって魂胆だろああ面倒臭い。
合コンとかいつも以上にヘラヘラしないといけないからほんと嫌なんだけど。



その時のオレはとにかく何事もなくその合コンが無事に終了することだけを考えていた。





そして当日。
オレの参加を勝手に決めたクラスメートは、どうやらメンバーを男女共に色んな学校から呼んだらしい。
見たことない奴ばっかが一つの部屋で集まった光景を何となく異様に感じた。

ソワソワとする女子らの視線がこっちに集まっていることは分かってたけど気づかないふりで。
ドリンクに手を付けたところで自己紹介が始まる。
一番に声を上げたのは、ドアの近くに座っていた黒髪の男子だった。





「秀徳からきましたーっ高尾和成でっす!」





なぜか、その屈託ない笑顔が、やたらとオレの神経に障った。

他の奴らも適当に自己紹介をし終えたけど、高尾と名乗ったアイツ以外の名前を覚えていない自分に気がついたのは、席替えで隣に来た女のコの名前が出てこなかったときだ。





「黄瀬くんが来るってきいてー、昨日はよく眠れなかったんだよぉ」

「あははっそうなんスか?」

「ね、黄瀬くん私に何か聞きたいこととかない〜?」





ねえよ。
というか、今のとこバレてないみたいだけど、コレは、マズイ。
どうしようかこの状況、と手元のグラスに手を伸ばそうとしたとき。
ドア側から、明るい声がオレを呼んだ。





「黄瀬くん、ドリンク切れてるけど何か頼む?あ、保井ちゃんも」

「あっ、高尾くんありがとー!」





高尾が「黄瀬くん何飲む?」と笑顔を向けてくるから咄嗟に「あ、アイスティーで」と答える。





「りょーかい。美男美女のお話の邪魔しちゃってごめんね!」

「やだ、高尾くんってば!」





若干唖然としつつ電話の方へと向き直った高尾を見つめる。
今、確実に、分かってやったよな。然り気無く、オレにこの女のコの名前を伝えたよな。
隣のコが「高尾くんってすごい気が利くよね〜」と感心しているなかで、オレは、高尾和成という人物から目が離せずにいた。



その後も高尾は目立ち過ぎずに上手く周りをフォローしまくっていて。
(きっとその事に気づいてるのはずっと見ていたオレだけなんだろうけど。)

カラオケから出たあとに「ごめん悪いけどこのあと用事があるから!」って抜けた高尾を追うようにオレも当たり障りなくメンバーから外れた。








「ちょっと、待った!」

「え、なに、え?黄瀬くん??」





追いついた先にいた高尾の手首を掴んで引き留めると、少しだけ驚いたような顔がこっちを振り向く。
切れ長の目をパッチリと見開くその表情に、なんか、心臓の辺りが一瞬疼いた気がした。





「あの、高尾、くん。良かったら、連絡先教えてくんないっスか?」

「へっ?……あ、うんいいよ!」





ぱっと咲いた笑顔に、今度は不快になるどころか、オレの心臓が早鐘を打ち始める。

なんスかこれ。
なんなんスか、これ。





「実はさ、今日の合コン参加するつもりなかったんだけど、元同中の奴にどうしてもって頼まれちゃって」





ケータイを弄りながら喋り始めた高尾をチラリと見れば、可笑しそうに微笑んだまま「あ、これナイショな?」と唇に指を宛がった。
その仕草ひとつひとつが何かムダに可愛くて仕方ない。
戸惑いながらも黙って見つめていたら不意に高尾が、顔を上げた。





「早く終われーって思ってたけど、思わぬお土産、もらっちゃったな!」





その無邪気な笑顔に。



心臓を撃ち抜かれたような、錯覚にあう。





気がつけばオレは、その両頬を引き寄せて。





キスをしていた。








(はじまりは、合コンから)





(13/9/11)




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