宮地サンとの距離







「宮地サン」





すっと伸びてきた手が当たり前のようにオレの髪に触れて、すくに離れていった。
見下ろす先に、無邪気に笑う後輩レギュラー。





「髪の毛に葉っぱくっつけてるとか、どこの少女漫画ヒロインですか」

「高尾、てめえ……」

「ちょ、怒んないでくださいよ!ちょっとした茶目っ気溢れるジョークじゃないですか!」





そういえば最近は前髪に芋けんぴくっつけたヒロインもいるらしいですよー、と限りなくどうでもいい情報を伝えてくる高尾。
その真っ黒な頭をわしゃわしゃとしてやれば爆笑しながら「ちょ、セットが!」と身を捩った。
一々動きが小動物みたいでムダに可愛いんだよくそ。

サラリと指の隙間から逃げていった黒髪の余韻に耽っていたら、高尾のつり目がクルリとこちらを見上げる。





「ね、宮地サン」

「あ?」





飄々としているようで、ひねくれてるようで、高尾は案外とまっすぐにこっちを射抜いてくる。
僅かに心音が速まったなんて、ぜってえ気のせいだ。





「オレ、宮地サンのふわふわした髪の毛、好きです」








(絶妙な距離感で)



(13/9/4)





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