高尾くんと童話の世界2





さて、お城へとやって来たシンデレラはその可愛さゆえ周りの視線を独り占めです。
そんなことは気にも止めず、シンデレラは近くのテーブルにあるご馳走に夢中でした。





「やっべ、これ超うま、家にある材料でできっかな?皆喜んでくれそ……」

「オイ」

「はい?って、あ」





突然声を掛けられ振り返ると、それはそれは綺麗な顔立ちの王子がこちらを見つめているではありませんか。
シンデレラは食事の手を止めると満面の笑顔を浮かべました。





「こんばんは王子様。素晴らしいご馳走の数々ですね!」

「いやご馳走満喫してんじゃねーよさっさとオレのとこ来い轢くぞこのバカ尾」

「ブファ!ちょ、宮地サン、王子……ブフォ!」





王子からの熱い視線に耐えかねナフキンで顔を隠すと、優雅に歩み寄った王子がサッとその手を拐いました。

抱き留められるような態勢になり、シンデレラは慌てます。





「ちょっ、宮地サン、ちかいっす」

「“宮地サン”じゃねーんだろ、今は」

「!!……お、王子なら尚更、近すぎですよ……っ」





恥じらう彼女に柔らかく微笑むと、周りの視線などドコ吹く風で。王子はそのまま庭園へと導きます。





「え、え?何展開?こっからは広間でダンスする流れじゃ……」

「高尾。どうせ結末は決まってんだ……さっさとオレのものになれよ、なぁ」

「いやいや自由すぎるでしょ宮地サ……ひゃぁ!」





突然耳朶を柔く噛まれ、シンデレラが甘い声をあげました。
益々笑みを深める王子に流石のはいすぺっくもドン引きです。





「や、ぁ…ひぅっ……お、王子、やめ、ふとも、もォ…撫でるの、ダメっ……ン、あッ」

「随分エロいシンデレラだな」

「ちが…!これは、宮地サン、がぁ……んんぅっ!」





「ノォーーーーー!!!!!」





「「は?」」





突然、二人の間に黒い影が割り込みました。





「シンデレラ!時間よ!ほら、じゅーっにじ!じゅーっにじ!!」




現れたのは薔薇の従者。
王子にただならぬ殺気を放ちながら12時コールでシンデレラを促します。
一瞬呆気にとられていたシンデレラですが、彼が王子のセクハラから助けてくれたのだと気づいて慌ててその場から駆け出しました。

王子も追いかけようとしましたが、従者のディフェンスに阻まれそれは叶いませんでした。










シンデレラが門の所に辿り着く直前。
12時の鐘が大きく響き渡りました。

魔法はとけ、シンデレラの身を包んでいた綺麗なドレスは消えてしまいました。
ただ、ガラスの靴だけは消えず、シンデレラの足に残されていました。





「あ、これは置いていかないと」





シンデレラはそっとガラスの靴を門の近くに置きます。
立ち上がって家に帰ろうとした彼女に、門番が声を掛けました。





「お嬢さん、裸足で歩くなんて……綺麗な足が汚れてしまいますよ」

「ぶふぉ!門番ちょう紳士……ッ」

「高尾君、いくら門番役とはいえ悪いけど裸足で帰ろうとするキミを見過ごすことはできないよ」

「へっ、ひ、氷室さ」





そっと歩み寄ってきた門番は当然のようにシンデレラを抱きかかえます。
驚いて身動ぐシンデレラの唇ギリギリに自らのそれを寄せると、門番が小さく「si…」と呟きました。
あまりの発音の良さと距離に戸惑うシンデレラ。
門番は艶やかに微笑みます。





「あまり動くと危ないよ。さ、キミの家はどこ?」

「あ、その道を、まっすぐ行った先に」

「いい子だ」





歩き出す彼にシンデレラはもうなるようになれと身を預けることにしました。



お城では、王子の前から突如消えた従者と残されたガラスの靴とで、大騒ぎになっていることなど。

シンデレラが知るはずもないのです。








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