火神とキッチンにて






Q.理想の旦那とは?





お互いの時間を大事にし、束縛せず、かつ必要なところは確りとフォローしてくれる。
空気のように自然な存在でそこに在り、時に甘やかし、時に叱ってくれる。

贅沢を言えば料理や洗濯とか進んでやってくれて、仕事にも真面目で、休みの日はどっか知らない場所に連れ出してくれる。



そんなハイスペックな人間がいてたまるか。



そう昔、母が読んでいた雑誌をチラリと覗き視たときに思った。










「しかし神はそういった存在を創り出したのだった……」

「カズ?何か言ったか?」

「ううん、モノローグ的なものだから、気にすんなよ」





土曜の朝はとても穏やかだ。

金曜の夜にあんだけあらぶった男と同一人物とは思えないエプロン姿の大我は、現在軽やかにフライパンを振るっている。

漂ってくるコーヒーの匂いに誘われて、シーツにくるまったままキッチンの方へと歩いて行けば、ギョッとしたような顔をされた。
でもすぐにそれは呆れた表情に変わって。フライパンを持つ手とは逆の手で、頭をくしゃりと撫でられる。





「オマエ、せめて下着くらい穿いてこいよ……風邪ひくぞ」

「んー」

「ったく」





ちゅ、と唇にキスをひとつもらう。
ナチュラルにやってくれんなーもー、と見上げたら、もっかいの合図だ。



最初の頃はどこの海外ドラマだよと毎回噴き出してたけど。
人間朱に交わればあかくなるもんだね。





「たいがー」

「ちょ、まて、待て!せっかく昼飯作ってんだから、まてそれ以上はマズイ」

「ぶは!大我、焦りすぎっしょ。んじゃ、和成クンは着替えてきまーす」

「カズ」

「……ン、」





振り返るまえにもう一回。

名残惜しそうに見つめてくる赤い瞳を見つめ返せば、優しく微笑まれたから。





「大我にとってさ、理想の旦那ってどんな?」





ふと思っていた問いが口をついて出た。
大我は一瞬キョトンとしたあと。

ニッコリと無邪気な笑顔を、オレの好きな笑顔を浮かべる。





「カズにとってイイ旦那であれば、理想だな」

「……っ。じゃあ、大我は世界でいちばん理想の旦那サマだね」

「そっか」










Q.理想の旦那とは?








(まっすぐに、自分を愛してくれるひとです)






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