緑間に襲われる


(※未来)





早いもんで緑間との付き合いもうっかり5年が過ぎて。こないだオレらも成人を迎えた。

成人式が終わってしばらくした頃。
こっちも何だかんだお世話になり続けてる大坪サンらと居酒屋で同窓会して盛り上がり過ぎちゃって、完全に終電をスルーした。

どうするこれカラオケでも行く?って話してたら緑間が借りてるマンション近くだからってことで。先輩らは宮地サンとこに行くからってそこで解散して、オレは緑間ん家に一晩泊めてもらうことになった。





「ごめんねーっ、真ちゃん!成人して早々ねーっ」

「とりあえず水でも飲んで落ち着けこの酔っ払いめ」

「だいじょぶなのだよ。まだイケるのだよ」

「真似をするな!」

「あははー怒られたあー」





すっかり楽しくはなってるけど、意識はハッキリしてるし吐き気とかもないから大丈夫。たぶん。

とりあえずリビングのソファに腰を下ろすと、隣に置いてあったクッションを引っ張って抱え込む。
どっかで嗅いだことのある匂いだなと思ったら真ちゃんの香りだったわ。当たり前か。





「真ちゃん家って真ちゃんの匂いだよなあ」

「ゴホッ……なっ、にをバカなことを言っている、家主なのだから仕方ないだろう」

「いや別にわるい意味じゃねーよ?むしろ、なんか落ち着くわー」

「……ッ」





フワフワとし出した意識のなかを漂っていると、隣に緑間が座る気配を感じる。見れば案の定変わらずでっかい体格のソイツがそこにいた。
てかなんでわざわざ狭い方にきたの?





「あ、オレこのままこのソファ借りるし真ちゃん寝室行っちゃっていーよ?」

「……」

「え、スルーされたの?いまオレ、スルーされたの?」

「高尾、少し黙れ」

「は?な……」





なんで?

って聞こうとしたオレの言葉は最後まで続かなかった。





思いっきり、口を塞がれたから。




しかも、手とかじゃなく。
がっつり、口で。





「……ん…」





わあ。緑間ってば吐息エロい。
とか言ってる場合か。

段々とこっちに覆い被さるように深さを増してくそれは間違いなく世間一般でいうところのキスで。
なんで今このタイミングでオレがそんなことされてんのか意味わかんねー。





「……んっ、ふぁ……ちょ、みどり……ま……!」





自分の口から漏れる声に耳を疑う。
羞恥と焦りで緑間の身体を強く押し返せば、案外あっさりと離れていった。





「……っ、はぁっ……ちょ、えぇぇ?……真ちゃーん?」





さっきまでぼんやりしてた視界は今やハッキリし過ぎるくらい見える。
すぐに緑間の表情が目に入り、オレは思わず変な声を上げてしまった。

なんでそっちが驚いた顔してんの。驚いてんのはオレの方だって。





「緑間?」

「……ッ触るな!」

「はぁ?!」





固まってたから手を伸ばしたら、顔を赤くさせ大袈裟に拒否られる。
いやだからおかしいっしょ。それどっちかってーとオレのとるべきリアクションじゃね?

おっきな掌で口元を覆う姿にとりあえず溜め息をついたら、緑間の肩がビクリと跳ねた。





「しーんちゃん、オレはだいじょぶだからとりあえず落ち着こーか」

「……っな、オマエはバカか?!なぜ男に襲われかけてそんなに冷静なのだよ!」

「ぶはっ!襲われかけてたのアレ?」





思わず吹き出したけど、緑の瞳はまっすぐにこっちを見つめていた。

ゆっくりと、長い指が頬に触れる。





「……拒絶しろ」

「は?」

「……もっと、全力で拒絶しなければ……オレは止めない」





そっと瞼に唇が落とされる。





「高尾、」





懇願するように名前を呼ばれて。
震える手で頬を撫でられて。



オレは、嫌悪感なんて微塵も感じなかった。








(オマエが望むなら)



(13/1/7)



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