黒に染まれ12










鼻歌うたいながら料理してる高尾を後ろから抱き締めたら、おもっきりエルボー食らった。





「……っ、お、ま、」

「あんだけキッチンにいるときは入ってくんなっつったよね?」

「……、仕方ねえだろ。エプロン姿にムラッときた」

「青峰、帰る?」

「……」





笑顔で尋ねてくるから渋々リビングの方へと戻る。
料理を再開した背中をぼんやり眺めてたら、不意に高尾が振り返った。
怒ってんのかと思ったら、わりと表情は柔らかい。





「明日オフだなー」

「あん?だから高尾ん家来てんじゃねえか」

「ぶはっ、青峰って、ほんと、バカだよなぁ」

「オマエ喧嘩うってんのか」





ちょっと凄んでみせてもケラケラと笑うだけ。
相変わらず、掴めないやつ。








オレのなかの高尾に対する感情は、前とは比べもんになんねえくらい温かいものに変わった。と思う。

支配欲とか、独占欲とか。
そういうドロドロしたのが薄れて、落ち着いたっつーか。



そうしたら、簡単に答えはおちてきた。



最初から、好きとかそんなんじゃなかったんだ。





(たぶん、好きより、もっと)





大事にしてえとか、傍にいてえとか。
そんな単純な思いばかりがオレのなかに広がって。





(ガラじゃねえよなぁ……)





アイシテルとか。

ぜってー言えねえ。





「青峰」

「あ、ああ」

「聞いてなかったろ、いまの」

「あー、わり。なに?」





いつの間にか出来上がってた料理をテーブルに並べて、高尾がオレの方を覗き込んでいた。





「明日がオフだって」

「や、それはさっき聴いた……」

「ことは、今日の夜は、ちょっとくらいムリできなくもないぜ?ってこと」

「は」





ぽろりと零された発言に持ち掛けた箸を取り落とす。

固まるオレをヨソに、高尾はいつも通りの笑顔で両手を合わせた。





「いただきまーすっ」

「はっ?いま、なんつった?」

「別に?早くご飯食べろよ、冷めるから」

「今の、マジか。本気か高尾」

「はーぁ?何のことデスカー?」

「高尾ォ!」








高尾ん家のリビングにオレの声と高尾の笑い声が響く。





何てことはない。





心地いいある冬の一日。







(傍らで鳥が囀ずる)





(13/7/17)








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