紫原と歯医者
(※帝光高尾くん設定)
(※中学生)
「あれ?紫原?」
「た、高ちん!」
珍しく機敏な動きでこちらを振り向いた紫の巨人は今にも泣きそうな顔をしていた。
どうしたー?って首を傾げながら近づいて、その道の先にある建物を見て納得する。
「なに、オマエも今から歯医者?」
「も、ってことは高ちんも?よかった!ねえ治療中ずっと横にいてくんない?手え握っててよ」
「ブフォ!ちょっ、ムチャ振り?!」
噴き出すオレを見下ろして、紫原はぎゅっとオレの手を握ってくる。
え。なに、まじなの?
「高ちん一緒なら怖くない大丈夫」
「自己暗示かよ。ってか紫原、歯医者怖いの?」
「高ちんと一緒なら怖くない大丈夫」
「ちょ、オレの話聞いて」
というか公道で人の手を握りしめてブツブツ言うのヤメテ。
巨体に似合わず歯医者を恐れる紫原が可愛いくて、思わずその高い位置にある頭を撫でてやれば、キョトンと見開かれる紫の瞳。
視線がぶつかったついでにニッコリ笑ってやった。
「大丈夫だって!オレの代わりにこないだ真ちゃんからもらったクマのぬいぐるみ握っとけよ、な?」
「それはいらない」
「オイ」
その後、予約の時間ギリギリまで押し問答は続いたのだけど。
歯医者で紫原の絶叫を聴いたオレが笑い転げてまともに治療を受けられず、結局彼の手を握ってやることになるなんて。
そのときのオレは知るよしもない。
(オレの治療が進まない)
(13/6/20)
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