黒に染まれ9
季節が過ぎるなんてあっという間だな。
そう呟いたら「青峰……なんかおじーちゃんみたい」とかビミョーな視線をもらったからとりあえず高尾が飲んでたジュースを奪って一気してやった。
「あああ!それ飯の後に取って置いたのに……!!」
「わりーわりー」
「絶対思ってないだろそれ」
唇を尖らせてるのを横目にゴロリと横になる。
もう屋上で過ごすのもだいぶ寒くなってきた。
冬はもう間近だ。
「高尾」
「ん?なに」
一度横になった体を起こして高尾の方へと向き直れば。不思議そうに眉を寄せるから。
無遠慮にその肩へと額を宛て、凭れる。
「青峰……?」
当たり前のようにオレの頭に触れたその手首を捕れば、少し驚いたように高尾の体がびくりと震えた。
そうやって、オレの行動で反応を示すコイツを。
もっと。
「具合悪い?大丈夫か?」
「……!!」
無意識に首筋へ寄せ掛けた唇を体ごと離す。
心配そうな橙色の瞳とぶつかって、罪悪感がわずかに過る。
その心配がオレをコートに立たせる為だけのものだとしても、オレは。
「もうすぐWCだからちゃんと自己管理しとかねーと、な?」
ふわりと笑った高尾の顔が少しだけ揺らいで見えたのは、きっと気のせいだ。
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(13/5/28)
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