宮地サンを陥れる
(※「宮地サンにおねだり」の高尾くん)
「おい、高尾」
練習終わり、真ちゃんの後を追って部室を出ようとしたところで宮地サンに呼び止められた。
表情筋が思わず弛みかけたのは仕方ない。
「はい?なんすか宮地サン」
素知らぬフリで笑えば綺麗な顔がわかるかわからないか程度に歪んだ。
機嫌の悪さがオーラで伝わってくるけど、今日のオレはそー簡単には折れませんからね。と。
「オマエ、最近、あれじゃね?」
「は?あれ?」
「いやアレだよ、」
「いやだからどれですって」
「……っ」
ちゃんと言ってくんないと。と言外に伝える。
いっつもいっつもオレばっかとか、イヤだ。
宮地サンがオレのこと好きなのも大事にしてくれてるのも知ってるけど。
たまには宮地サンから、オレのこと求めにきてくださいよ。
かなり気まずそうに視線をさ迷わせたあと、宮地サンは観念したように口を開いた。
「……キス、ねだらねえよな、最近……」
「宮地サン。オレにキス、ねだって欲しかったんですか?」
「ッ、高尾てめえまさか、確信犯か……!」
にっこり笑ってみせれば、やっと気づいたらしい。
わー照れ顔貴重。
「もー、2週間も我慢してんのに宮地サンなにも言ってくんないからオレとちゅーすんの嫌いなのかと」
「なわけねえだろ、バーカ」
「……ン、…」
二人以外は誰もいない部室にやたら大きなリップ音を響かせて唇が重なる。
なんどか角度をかえたあと、そっと離れた宮地サンのそれを名残惜しい気持ちで見上げてたら。明るい瞳がこちらを見つめ返していた。
「もう部室でしないって前に言ってたのに」
「るせー」
「宮地サン」
「あ?」
不機嫌そうな声音も照れ隠しだって、オレはもう知ってる。
そして。
「もっかい、してください」
そうやって笑ったら、優しい口づけがおちてくることも。
(宮地サン、ちなみに今日はちゅーの日らしいです)
(……これからしばらくは毎日キスの日な)
(え)
(13/5/23)
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