緑間のデレ期







「うーあー…あぅー…あー」

「さっきから煩いぞ高尾、というか何語なのだよそれは」

「しーんちゃーん。そろそろ帰ろうぜー……もーあっつくてさー」





オレの声に顔だけ此方へと向けた高尾だが、身体は机にだれたまま。
額や首筋にうっすら汗をかいているところを見ると確かに暑いのだろうが。





「練習中程ではないだろう」

「バスケしてるときは気になんないからいいの!このジメッとした空気の図書室で勉強とかしてるのがヤなんだって!」

「空調が入るにはまだ早いからな」

「つうか試験勉強するなら真ちゃん家かオレん家でよくない?」





何てことはないように言ってのける高尾に意識せず眉間にシワが寄るのがわかった。





「良くない」

「えええなんで?クーラーも入るし飲みもんもあるし小腹が空いたら何か食べるもんもあるじゃん家なら」

「集中出来ないのだよ」

「へ?」





キョトンと見上げてくる橙色の瞳を見つめ返し、先程と同じ言葉を告げる。





「集中出来ないのだよ、個室にオマエと二人で居るのは」

「はっ?」





ガバッと音がする勢いで身体を起こした高尾を横目にため息をつく。
コイツは、普段からスキンシップ過剰な割りにこういうところが鈍い。
一々口にしなければ分からないのかと視線で訴えれば、驚いたような瞳とぶつかった。





「し、真ちゃんがデレた!」

「デレてなどいないのだよ」

「デレたでしょ今!」

「デレてない!」

「デレた」

「デレてない」








そのあと。

二人して司書に図書室を追い出されたのは言うまでもない。








(でも折角だから真ちゃん家行きたいなー、なんて)
(……好きにしろ)
(今日の真ちゃんのデレ率やっばいわなんなのデレ期なの?)
(デレてないと言っているだろう!)





(13/5/19)



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