ふたつの光が重なる






キミは今、笑っているんだろうか。










「黒子?なにボーッとしてんだ?あ、いやいつもか」

「……火神君、ボクが年がら年中ボーッとしてるみたいな言い方はやめてください」

「あん?でもわりとオマエ、いつも何考えてるかわかんねーっつうか、ぼんやりしてる気がすんだけど」





そんなことは、と言いかけて。
ちょうど視界に入った青を追いかけて視線が動く。

ああ、さっきまで曇っていたのにいつの間にかこんなに晴れていたんだ。

教室の窓から見える、その突き抜けるような深い青色が夏の訪れを告げている。





ベシ、と間抜けな音がしたと同時に頭に軽い衝撃。





「……。痛いです」

「人と話してんのにぼんやりし出すオマエが悪い」

「すみません、空が」

「は?空??」

「空が青いな、って」





火神君の肩越しに見える其を指差せば、一瞬振り向いたあと、その赤い瞳はボクの方へと戻って来る。





「……。その宇宙人を見るような目、やめてもらえませんか」

「いや急に何を言い出したのかと」

「別に意味はないです」





ただ、思ったことを口に出しただけだと言えば火神君が少し困ったように頬を掻く。





どうしてキミがそんな顔をするんですか。





言い掛けた言葉は、彼の大きな手に遮られた。

無遠慮にくしゃくしゃと頭を撫でるその手に言葉を無くす。





「まあ、アレだ、黒子は……何考えてるかわかんねーくらいがちょうどいいわ」

「火神君、……意味が分かりません」

「だああ!うっせえな!オラ、さっさと日誌書いて部活行くぞ!!」

「はい」





離れていった手の温もりが少しだけ名残惜しかったなんて、言わないけれど。








照れたように視線を反らす彼の横顔に、嘗ての光が、微かに掠めて滲んだ。








(目の前の温かい光と、消えない青)



(13/5/6)




[ 211/284 ]

[mokuji]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -