黒に染まれ8
あれから。特別何かが目に見えて劇的に変化したわけでもなく。
唯一変わったことといえば、部活上がりにそのまま高尾ん家に行くのがオレの日課に加わっただけだ。
二人で居たところで大した話もせずダラダラと過ごす。
それはそれでイイと思ってたはずなんだが。
案外と早く、よくない事情が出てきた。
「……ん、あ?」
床に転がったまま寝ていたオレの体から高尾がかけたらしいタオルケットがずり落ちる。
そういや明日はオフだからっつってここに泊まったんだったな。
そんなことをボンヤリ考えつつ身動いだら、ソファに綺麗に収まるように眠っている高尾の姿が目に留まった。
なんか、猫みてえ。
小さな寝息に誘われるようにそちらに寄れば伏せられた睫毛が頬に影を落としているのが見てとれた。
「……、ン……」
零れた息と、開いた襟首から覗く白い首筋。鎖骨。
無意識にそこに触れて、そっと指を這わせる。ピクリと反応した高尾の瞼にキスを落とす。
「ふ……は、ぁ」
自分の息が熱を帯びている自覚はあった。
コイツに触れる度、頭の芯がビリビリと痺れるような、心地好さを覚えんだ。
「あー……くそ、」
唇の横に口付けてから、距離を取る。
すぐ下には、無防備に目を閉じたままの。
「高尾……」
眠るその姿は、オレだけのものなのに。
(その唇では目覚めない)
(13/4/28)
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