緑間が勘違い


(※ちょっと緑間サン荒ぶってます)







「高尾」

「おーっす、おはよう真ちゃん!」

「……高尾、座れ」

「え?なに?座るけど」





今日は試験期間で朝練もなく、高尾は朝礼間際に登校してきた。
横目に座ったことを確認してから話を切り出す。





「高尾、キサマ色恋に現を抜かしているなど、随分と余裕なのだな」

「はっ?なんて?つつ、…ぬか??」

「しらばっくれるとはいい度胸をしている……」





いつもの惚けた調子で誤魔化そうとしているのか。間抜け面で聞き返してくる。
オレは眼鏡のブリッジを押し上げながら溜め息をついた。





「練習を早く切り上げた挙句、偽りの理由を告げるなど……」




練習、という単語を出すと初めて反応がある。
「あー……」と記憶を辿るように天井を仰いだ高尾は、それでも悪びれる様子もなく。





「もしかして……金曜のこと?」




そう言ってヘラリと笑った。
あくまでも自分のペースを崩さない態度に僅かな苛立ちが募る。





「その薄い脳では三日前の記憶すら曖昧らしいな」

「ちょ、ひっでえ。覚えてるって!ちゃんと覚えてます!」

「そうか。では金曜の放課後、キサマは何処で何をしていた?」

「えー……言わなきゃダメ?」

「……ッ」





高尾の狡いところはこうやってすぐに自分の流れへ持ち込む所だ。小首を傾げた位では今日のオレは折れるつもりはないぞ……!





「なーんてな。てか聞いてきたってコトは、知ってんじゃないの?実は前から約束してたんだよね」

「はっ?」

「オレの勘違いで練習ある日に会えるって約束しちゃってて、だから自主練は早めに切り上げたワケ。結局遅くなって待たせちまったけど」





あっさりと白状した高尾に呆然としていると「ごめんな、真ちゃんに言うと怒ると思って」と笑いながら告げる。そして此方へと身を乗り出し、オレを覗き込んだ。

バッチリと目が合い、咄嗟にその晒された額を押し返す。





「いって!何すんの!……えっ、もしかして怒ってる?」

「あ……当たり前だろう!オマエはいったい同時に何人の女子と約束をしていたのだよ……!」

「……はっ?女子と、約束??」





ワナワナと震えながら放ったオレの言葉を、高尾は相変わらずの呆けた顔でおうむ返しにする。
あれだけ気持ちよく報告しておいて。まだ惚ける気か。





「……っ!ぶはっ!ちょ、真ちゃん……たぶん、何か勘違いしてるわソレ!」

「っ??……勘違い、だと?」

「おー、だってオレが約束してたのは黄瀬くんだし」

「……は?」





黄瀬??
それはあの。オレの知る、黄瀬のことか??





「だが金曜の夕方、オマエが多数の女子と話していたと……!」

「それたぶん黄瀬くんのファンじゃね?」





…………。





「黄瀬ぇぇぇぇ!!!」

「えぇぇ?悪いの黄瀬くんじゃないから!オレと勝手に勘違いしてた真ちゃんだから!!」

「どのみちキサマが黄瀬と会っていたことにより練習を疎かにした事実に間違いはないのだよ!!!」

「だからそれもオレのせいだって!!てか何かこれ浮気バレた女子みたいなってね?!何かおかしいってコレ!!」

「おかしいのはキサマの頭の中だ!!」

「えぇぇえぇ?!!!!」








(アイツら……担任来てるの気づいてないよな……)
(誰か止めろよ……)



(13/1/6)




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