黒に染まれ4
ぼーっと秋に変わった風を感じてたら視界が陰って、いつものように名前を呼びそうになるのを寸でで止める。
「もー!青峰くん、ちゃんと練習来てよ!」
「さつき?……高尾、は」
「え?高尾くんなら今日は風邪ひいて学校お休みしてるよ?青峰くん仲良いのに聞いてなかったの?」
体を起こしかけたオレに容赦なしに落とされた言葉はなかなかのダメージを与えてくる。
仲良し、なわけじゃねえよ。
端から見たらそんな風に見えてたのか。
「つうかオレ、アイツの連絡先とか知らねーし」
「……」
オレたちを繋ぐ何かがあるとすれば、それはバスケだけだ。
そもそもアイツはオレに好んで関わってきてるわけじゃない。ただ一つの目的を掴むための、土台みてえなもん。
「大ちゃん、はいコレ!」
「あ?」
「高尾くんの連絡先とお家までの地図!先輩たちには私から言っておくから、大ちゃんは今から高尾くんのお見舞いに行くこと!」
「はぁぁ?!」
何を言ってんだコイツは。
「高尾くんね、桐皇来るのに独り暮らしはじめたって前に言ってたから、私が早めに部活上がって様子見に行こうと思ってたの」
「だったらオマエが行けば……」
「どうせ練習出てくれないのなら、しっかりチームメイトとの信頼関係を作ってきて!」
バシッと肩を叩かれ、促される。
渡された紙とさつきの顔を交互に見つめたら、さつきは柔らかく笑った。
「大ちゃんは言葉が足りないだけだよ」
口に出さないと、分からないことだってある。
そう告げられオレは屋上を後にしたけど正直、どうしたらいいかわかんねーんだよ。
自分の感情をぶつけたところで、高尾は。きっと。
(絡まった糸を千切る指先)
(13/3/18)
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