黒に染まれ3
結局、テツの新しい光ってやつもオレには敵わなくて。黄瀬もそれなりに楽しませてはくれたけど。オレに勝てるヤツなんて、やっぱいなかった。
そうして。
夏は終わった。
「高尾ォ」
「ん?」
「ストバス行くかー」
「まじかー」
いつもどおりの日常が戻ってきて。
今日も練習に誘いにきた高尾を逆に誘えば、少しだけ驚いた顔をされた。
「おら、行くぞ」
「おぉ…?」
手首を掴めば抵抗はしない。
コイツはどこまでも自由なクセにどこまでも従順だ。
不意に動きを止めてジッとその顔を見たら、きょとんと見つめ返してくる。
「……なに」
「……オマエさ、何でそこまで緑間に拘んの」
「……っ、青峰に話す必要、ないと思うけど?」
こんな質問、普段なら飄々とかわすだろ。
夏から、ずっと引き摺ってんのかよ。
緑間とやれなかったこと。テツらに緑間が敗けたこと。
何かムカついて、掴んだ手首をそのまま引き身体ごと引き寄せる。睨み上げてくるけど全然怖くねえし。
「緑間だって、どーせオレとやったら勝てないぜ」
「そんなことは知ってる」
即答されて、驚く。
正直「そんなことない」と否定してくると思ってた。
高尾がふと溢した笑みは自嘲に近いもので。
「いちばん強いのは青峰だってのは分かってる、けど、そーゆんじゃねえんだわ」
緑間、なんだよ。
そう呟いた高尾の声が震えてたことに。
オレは気づいちまったから。
そのちっせえ体を包み込むように掻き抱いた。
(この道は一方通行行き止まり)
(13/3/16)
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