宮地サンに怒られる
「オイコラ待て」
「えっ、何すか宮地サン…うわ顔が怖い!」
「ハハハ。高尾とりあえずそこに座れ轢くから」
「えぇぇっ?!」
部室を出ようとしたところで宮地サンに呼び止められた。
即座に脳内で「なんか怒らせるようなことしたっけ?」と思い返すけど、特にコレといって思い当たる節はない。でもこの顔はかなりキレてる顔だよな。
笑って誤魔化してみても、どうやら見逃してくれるつもりはないみたいだ。完全に目がハンターなんだけど宮地サン超こええ。
「オマエさ、なんでオレが怒ってっか分かんねーの?」
「ハイ、全く」
「テメー……ぶち犯すぞ……?」
「ちょ、宮地サン!コワイコワイ!顔がまじすぎて冗談に聞こえない!!!」
そんないい笑顔で犯すとか言われても……!
とりあえず床に土下座しか選択肢はないのかと思いかけたとき。オレの頭分いっこ上から深いため息が降ってきた。
「あの……理由、わかんないっすけど、オレがなんかしたなら謝りますから」
「あ?」
「……そんな顔、しないでくださいよ……」
「……ッ」
俯いたら顔が見えなくなるから、宮地サンの目をしっかり見る。
色素薄いなー、とか関係ないことをぼんやり考えてたら額をぺシッとはたかれて我に返った。
やべ、ボーッとしてるのバレたかも。
慌てて意識を引っ張り上げたら当の宮地サンはオレなんか見てなくて、思いっきり他所を向いていた。
「?宮地サン??」
「〜〜っ……あーっ、もういい!さっさと帰れ!」
「へっ?」
「早く帰れって言って……あ、いやもうオレが帰るわ」
「えっ、ちょ、待ってくださいよ……!」
言うが早いか淀みのないスピードでさっさと荷物を抱えてしまう。その間も視線は合わないままで。
オレは咄嗟に宮地サンの学ランを引っ張った。
「結局なんで怒ってたんですかっ?言ってもらわねーとオレわかんねえし!」
頭悪くてすんません!と宣言すれば、少しだけ振り返った宮地サンと視線がかち合った。
あ。もう怒ってない顔だ。
「バーカ、それくらい自分で考え……って何笑ってんだオマエ」
「えっ?あ、いや、宮地サンの今の表情好きだなあって思って」
「……は?」
「怒ったときの顔より、今の顔してる宮地サンの方がオレは好きだけどな」
「………ッ」
あれ?反応がない。と覗き込もうとした瞬間に、頭頂部が激しい鈍痛に襲われる。
「〜〜っ!み、宮地サ……バッグで殴るとか……!」
「うるさい。もう帰んぞ!」
「……っちょ、もー何なんすか?!」
宮地サンの沸点がオレには全くわからない。
でもまぁ、隣を歩く横顔はもういつも通りの表情だし。
いっか。
(あ、真ちゃん帰っちゃったんだ。待ってくれててもいーのに……)
(……。緑間やっぱり轢く)
(えぇぇ!なんで?!!)
(13/1/5)
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