ず「図図」


(【図々しい(ずうずうしい)】
人に遠慮せず、
自分勝手なことを
平気でするようす。
あつかましい。)








「ねー高ちん、あつかましいってなに?」

「え?紫原??……ってか重っ!!ちょ、乗んないで!潰れる!!」





休憩中、合宿所の外にある木陰のベンチで寛いでる高ちんを見つけた。
後ろから首に手を回せば、微睡んでたのかすごいビックリしてるし。
慌てる姿が可愛くて思いっきり凭れたら全力で抗議された。仕方ないから離れる。





「……あー、隣座る?」

「うん」





チラッとオレに視線を寄越す高ちんは相変わらずちっさい。って言うと拗ねるから言わないけどたぶんオレすぐ顔に出るからバレてそう。





「で?なんで急にあつかましいとか出てきたわけ?」

「昨日、同じ学校のヤツに言われたんだよね。『オマエ、バスケが好きでもないくせにスタメンとかあつかましいんだよ』って」

「……は?何だよそれ」





少しだけ高ちんのまとう空気が変わった気がして、驚く。

いつもニコニコしてて優しくて怒ったとことか見たことない高ちんが。
オレが分かるくらいに怒ってる、っぽい。





「え、なんで、高ちん怒ってんの?え……っオレの、せい??」





イヤだ。なんかヤだ。
高ちんにはいつもみたいに笑っててほしい。

オレの口から無意識にでた言葉に高ちんはちょっと目を見開いて、首を横に振った。





「は?え?違う違う!そんなこと言ったヤツにムカついただけで、別に紫原に怒ったりしてないって!」





あ。
いつもどおりの、笑顔。





「つーか実力主義の世界なんだからしゃーないのにな。紫原に八つ当たってるヒマあったら、練習しろっての」





ヘラ、と笑うその向こうに少しだけ見えた黒い影は。たぶんオレには分かんない“なにか”で。
どうでもいい人間にぶつけられた(たぶん)悪い感情より、高ちんの隠し持ってる“なにか”がわかんねー自分にムカつく。

もっと、もっと近付きたいのに。





「紫原、オマエは今のまんまでいいよ」





その笑顔が。

もっとほしいだけなのに。








(そう思うのはもしかしてあつかましいこと??)



(13/3/7)



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