緑間の晩御飯
(※大学生、高尾くん通い妻)
「……っ」
口に含んだ瞬間の食事の違和感。
咄嗟に顔を上げると料理を作った本人はボンヤリと洗い物をしていた。
「高尾」
「んー、どったのー真ちゃ……えっ、なに?」
ズカズカとダイニングの方へと歩いて行く。名前を呼ばれ不思議そうに首を傾げた高尾が目を見張ったのが分かった。
断りなく額へ手を伸ばせば、ビクリと身を退こうとするから空いた腕でその腰を引き寄せ動きを封じる。
「ちょ、真ちゃーん……?」
戸惑うように見上げてくる瞳に一瞬揺らぎそうになる何かを理性で押し留め、オレは口を開いた。
「体調が悪いのだろう」
それは、問いかけではなく確認。
「えー?別に元気だけど……」
「高尾、オレに誤魔化しが通じると思っているのか?」
「……はいはい、ムリでした!オレの負けです!確かにちょっとだけ風邪っぽいかなーとは思ってたけど」
笑って流そうとした高尾に間髪入れずに問い返せば、バツの悪そうな表情。
どれだけ此方が苦労してオマエの些細な変化に気づく程に近づいたと思っているのか。
「今日は家に泊まれ。というか今すぐ休むのだよ」
「ん。ありがと真ちゃん。……なぁ、でもわりとまだ平気な程度なんだけど、なんで分かったの?」
単純な疑問といった感じで尋ねられ、オレは鼻で笑った。
「食事がいつもと味が違った」
「まじか。え、ウッソだろ?味見したときはフツーだったんだけど!」
「フン……オマエの作る食事を一番口にしているのは誰だと思っている?」
そう伝えれば照れたように笑う高尾に、ひとつだけキスを落として。
寝室へと促した。
(真ちゃーん!おはよ!)
(体調はもういいみたいだな)
(おーバッチリ。てか今朝、青峰からメール来てて、ここ来る前にあっちで作っといたご飯がいつもと味違ったけど何かあったのか?ってスゲーよなやっぱり食ってるヤツには分かんだなーってアレ?真ちゃん項垂れてどしたん??)
(13/3/6)
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